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呼び出し
それから数週間経った頃、ある女の子に呼び出された。
ぱっちりとした大きな目で可愛らしい顔をした子だった。
「あの…倉橋くん、こ、今度の日曜日…予定あいてる、かな…?」
そう言われて驚いた。
「えっ…と、ごめん…。
……………名前、教えてくれる?」
名前も知らない子だった。
「えっ!あ、そ、そっか、ごめんなさい!
えっと…霧島 咲(きりしま さき)です」
きりしま さき……
「ごめん、分かんない……同じ学年?」
「あは…同じ学年だよ。まあそうだよね、全然すれ違わないし」
「すれ違わないって…」
「あたし、特進クラスなんだ。だから…」
ああ…確かに特進クラスは教室の棟が違うから…。
そりゃあんまり見たことないわけだ。
なんで—。
「…あのさ、アンタは……俺が今までどんなことしてたのか、知ってんの?」
「え?どういう…」
…………この様子だと知らないか。
「…いや、別にいいわ。気にしないで」
「…あの、本当にいきなり呼び出してごめんなさい。あの…今度の日曜日、よかったら一緒に映画、観に行きませんか…?…あ、む、無理だったら…」
「いいよ」
「え……?」
「日曜日、何もないから。一緒に行くよ」
もう遅いのなら、何もしない。
「もしも」なんて期待もしない。
他の方法なんて無いから、また逃げるしか出来ない。
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