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日曜日
待ち合わせの場所に向かうと、彼女はもう来ていて腕時計を見てそわそわしていた。
「………おはよ」
「あっ、おはよう」
「ごめん、待たせた?」
「ううん、あたしも今来たとこだから」
「そう…」
「……」
「……」
「い、行こっか!チケットも取ってるから…」
「ああ…ありがとう」
彼女は今まで出会った女とは違うタイプだった。
今まではやたらと引っ付いて来て、わざとだと分かる上目遣いをしてくる女が多かった。
「わざと」だらけの行動ばかりだった。
でもこの子は少し恥ずかしがり屋なのか離れて歩いていた。
目もあまり合わない。
そう言えば誘われた時もなんだか一生懸命、勇気を振り絞って言った感じだったな…。
…………きっと素直で純粋な子なんだろう。
そう思っていると、さあっと風が吹いた。
隣で歩いている彼女を見ると、長い黒髪が揺れていた。
あ………………
「どうしたの?」
「え?」
気づけば彼女の髪に触ろうと、手を伸ばしていた。
「……いや、なんでもない」
「えー…と、3番スクリーン………あった」
彼女の髪が揺れたのを見た時、カナの後ろ姿が頭の中に浮かんだ。
彼女の髪は、カナのあの綺麗な黒髪によく似ているからだ。
綺麗でサラサラと流れるような黒髪。
後ろの席からいつもその髪を見ていた。
『ナオ』
身体の中に染み込んでいくような声。
あの声で名前を呼ばれるのが、心地いいと感じていた。
完全に戻れないところまできて、こんなこと思うなんて。
「本当にバカだな…」
俺の呟きはスクリーンの中で話している役者の声にかき消された。
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