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目撃

「面白かったねー」 「…そうだね」 そう答えたが、正直あんまり観てなかった。 内容なんか頭に入ってない。 「これからどうするの?」 「えっ……ど、どうしよ…」 映画を観た後の予定は決めていなかったようだ。 「…じゃあ、テキトーにその辺歩く?」 「う、うん」 腹減ったらその辺の店に入ればいいし。 映画館を出て、二人で特に行くあてもなく歩いた。 しばらくすると彼女は少し、辺りを見回し始めた。 「……入りたい店ある?」 「え?……えっと…」 「入りたいんだったら、ついていくけど」 「あ……ありがとう」 そう言って彼女は笑った。 花が咲いたような笑顔だった。 「ここ、入っていいかな?」と遠慮がちに聞く彼女に「いいよ」と答え、その店に入っていった。 そこはパワーストーンや天然石が置いてある専門店だった。 「こういう所よく来るの?」 「あ…うん。あたし、天然石とか好きなんだ」 「へえ……」 並べられた石はどれも鮮やかで綺麗な色をして輝いていた。 あ……この色。 カナに似合いそう。 —何考えてるんだ俺は。 バカすぎる。 手に取っていた石を元の位置に戻し、ふと顔を上げた。 ああ、もう。 ホント、バカだ。 なんでこんな時にまで見てしまうんだろう。 俺の視線の先には、カナとあの運転席の男がいた。

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