24 / 111
目撃
「面白かったねー」
「…そうだね」
そう答えたが、正直あんまり観てなかった。
内容なんか頭に入ってない。
「これからどうするの?」
「えっ……ど、どうしよ…」
映画を観た後の予定は決めていなかったようだ。
「…じゃあ、テキトーにその辺歩く?」
「う、うん」
腹減ったらその辺の店に入ればいいし。
映画館を出て、二人で特に行くあてもなく歩いた。
しばらくすると彼女は少し、辺りを見回し始めた。
「……入りたい店ある?」
「え?……えっと…」
「入りたいんだったら、ついていくけど」
「あ……ありがとう」
そう言って彼女は笑った。
花が咲いたような笑顔だった。
「ここ、入っていいかな?」と遠慮がちに聞く彼女に「いいよ」と答え、その店に入っていった。
そこはパワーストーンや天然石が置いてある専門店だった。
「こういう所よく来るの?」
「あ…うん。あたし、天然石とか好きなんだ」
「へえ……」
並べられた石はどれも鮮やかで綺麗な色をして輝いていた。
あ……この色。
カナに似合いそう。
—何考えてるんだ俺は。
バカすぎる。
手に取っていた石を元の位置に戻し、ふと顔を上げた。
ああ、もう。
ホント、バカだ。
なんでこんな時にまで見てしまうんだろう。
俺の視線の先には、カナとあの運転席の男がいた。
ともだちにシェアしよう!