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黒 ???side

「カナ、今日休日だし外でも行く?」 俺は目の前にいる恋人に声をかけた。 ………恋人、だと思っている。 「うん、久しぶりだしそうしよう」 賛成の返事をもらい、部屋から出る。 二人でウィンドウショッピングをしたり、外食したり楽しんでいた。 恋人ではあるが、もしかしたら違うのかもしれない。 最初はカナの相談相手をしていたが、だんだんと惹かれ付き合うようになった。 小さな違和感のようなものを感じたのは、初めて身体を重ねた時。 カナがこちらを見ていないかのように見えたのだ。 その目に俺を映している。 俺の名前も呼んでいる。 なのにどうしてか、カナの心がここに無いような気がした。 その理由が最近、分かった。 その夜、隣から微かな声が聞こえてきて目が覚めた。 「カナ…?」 見ると涙を流していた。 普段学校でどんな扱いを受けているのか、全て知っているわけではないけど大体のことは分かる。 また辛いことがあったのかもしれない。 涙を拭おうと手を伸ばすと、 『… …… ……』 最初、カナが発した寝言の正体は俺だと思った。 でも、すぐに俺ではないと理解してしまった。 分かった途端、悲しかった。 悔しくも感じた。 だが、同時に切なくなった。 その言葉から痛いほどの悲しみと孤独感を感じたから。 大丈夫。 泣かないで。 俺がいるよ。 そんな想いを込めて、俺はカナを抱きしめた。 「…北見さん?」 「えっ?」 名前を呼ばれて、ハッとする。 「大丈夫?気分悪いとか?」 「ああ…いや、考え事してた。体調は良好です」 「よかった」 答えるとカナはクスクスと笑う。 俺はその笑顔を見て安心した気分になる。 早く、泣き顔よりこの表情が多くなって欲しい。 「わあ…綺麗」 そこには色鮮やかな石たちが並べられていた。 「天然石か…。入ってみる?」 「うん」 「この色好きだなあ」 「北見さん、その色似合いそう」 「そうかな」 店内へ入り、そんな言葉を交わしながら商品を見ていた。 ふとカナが何も言わなくなったことに気づき顔を上げると、どこか一点を見ているようだった。 その視線の先を追うと男がいた。 カナと同い年くらいの男だ。 後ろ姿だったがなんとなくそう思った。 その子は何故か逃げるように店から出て行った。 「…倉橋くん?!」 連れの子だろうか。 可愛らしい女の子が彼を追いかけていった。 『今の子、同級生?』 そう声をかけようとしてカナの方を向いて、俺はその言葉を飲み込んだ。 カナは今まで見たことの無いような目をしていた。 真っ暗で、底が見えない。 何回も何回も黒く塗りつぶされたように感じる目だった。 それを見た瞬間、分かってしまった。 あの子がー。 『…ナ……オ……』 いつか聞いたあの寝言が、頭の中で再生された。

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