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罰 4

「……んっ」 目を開くとカナの喉仏が上下に動いたのが見えた。 「お前……」 飲んだ……? 「あー…不味」 そう言いながら唇を舌で舐めているカナを、呆然と見つめる。 「…何驚いてんの?フェラくらいされたことあるでしょ」 それは…ある、けど。 そんなことよりも終わった今、なんとも思っていないかのようなこの態度に驚いた。 これってやっぱり慣れてる…ってこと、だよな。 あの男にもしたんだ。 傷つく資格はないのに胸の奥に痛みを感じ、けど目の前にいるカナを見ると「変わってしまった」ように思えた。 カナは好きなヤツがいるのに他の男にこんなことするようなヤツじゃない。 「そんなに驚かないでよ。直は俺にフェラなんかよりすごいことしたくせに」 そう言われて頭が一気に冷えた。 そうだ。 俺は、嫌がるカナを無理矢理…… 「…カナ……」 自然と口をついて出た。 気づくと、カナの顔は憎悪に満ちた表情になっていた。 今まで見た中で一番、その感情しかみえない表情だ。 「…お前がその名前で呼ぶな」 憎悪に満ちた目と声が俺に突き刺さる。 「絶対お前を幸せにさせない」 そして口を少し歪め、 「 忘れるなよ 」 俺の耳元で囁き、教室を出て行った。 俺は床に座り込んで、しばらく動けなかった。 今のは、俺への復讐だ。 俺はカナにしてきた事は忘れてはいけない。 同時にこの想いは忘れなければいけないと思っていた。 でも、カナを傷つけた俺にはそれも許されないことだった。 カナを傷つけた罪を背負い、カナへの想いを抱えながら生きる。 それがきっと、俺に与えられた罰なんだろう。

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