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背負うこと

霧島とはもうあれから一緒に帰っていない。 「ごめん……これからは俺、一人で帰るから。霧島の気持ちにも答えられない」 そう言うと、彼女は驚いていた。 「え…どうして……」 「ごめん」 そう言うことしか出来なかった。 一方的に言って、その日はそのまま帰った。 あの時のことを思い出すと、つくづく自分は最低な人間だと思い知らされる。 あんな状況だったのに、感じて、カナの顔を見ると俺の中でまた汚い欲情が生まれた。 「忘れようと思っていたくせに」と自分に対する激しい嫌悪感が渦巻いていた。 それに、 『絶対お前を幸せにさせない』 そう言われた時、自分は一体何を考えていたんだと思った。 散々酷いことをしてきた俺には想いを忘れる権利も無い。 カナの幸せを壊したくないからとそうすることを考えたけど、そんなのは甘い考えだった。 カナにしてきたことを忘れるつもりはないけど、あんなことをした俺が幸せになること自体がいけないことなんだ。 カナはあの日からは特に何もしなかった。 目も合わさず、お互い何も言わずにただ毎日が過ぎていくだけ。 でも、終わった訳ではない。 「今日の放課後、一緒に自習教室に来て」 罪はいつまでも俺の後ろについてきて、まるで「逃がさない」とでも言うように離れないんだ。

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