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目的
放課後、言われた通りに自習教室へ向かう。
入ると何故かカナはシャツのボタンをはずし始めた。
「何、してんの…?」
「…セックス、しよ?」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
「……は…何言って…」
「だから、セックス」
…なんで?
なんでそんなこと言い出す?
何考えているんだよ…?
「お前…あの人は…?」
「あの人?」
「……付き合ってる人、いるんじゃなかったのか?」
「ああ…北見さんのこと?付き合ってるよ」
「じゃあ、なんでっ…」
「セックスしよう」だなんてそんなこと言える?
あの時、二人で幸せそうに笑ってただろ?
なのに。
「なんで裏切るようなこと…」
「北見さんは好きだよ。お前は単なる遊び」
カナは教卓に凭れながらそう言った。
遊び……。
確かにそうだ。
コイツは俺を心の底から嫌っている。
そこに何かがあるわけでもない。
でも、どうしても分からない。
あの人を確実に裏切るともいえる行動を取ろうとする理由が。
「……そんなの簡単みたいに言うな」
「そんな簡単に他のヤツと寝ないって?…でも直も遊びで寝たこととかあるんじゃないの?」
「っ…」
言われると何も出なかった。
実際そうだったから。
でもカナはそんなヤツじゃない。
あんなに幸せそうで、想い合っている相手がいるのに、遊びでそんなことをするヤツじゃないはずだ。
「でも…」
「ていうか、お前には関係ないよね。俺とあの人のこと」
冷たい視線を向けながら言われた。
そう言われるとますます何も言えない。
「関係ない」とはっきり言われ、胸に刺すような痛みが走った。
すると、カナは俺の腕を引っ張った。
いきなりのことだったため俺はバランスを崩し、咄嗟に教卓に手をついた。
目の前にはカナの綺麗な顔があり、細い首筋を見た瞬間、ドキリとした。
「……俺には目的があるんだよ」
「え…?」
目的…?
意味が分からないでいると、カナは自分の腕を俺の首に絡めてきた。
その時、
ガラッ—。
ドアが開いた音を聞き、顔を向けると、そこに霧島が立っていた。
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