38 / 111

泣き顔 4

「んっ、は…あっ」 カナの口から吐息混じりの嬌声が漏れていく。 「っ…は」 カナが動く度に下半身に刺激が走る。 やっぱり、俺のモノはカナの中に挿入っていて。 「んっ…まっ…ッ…」 一旦止めようと思い、手を伸ばそうとするが全然思うように動かない。 「あ、はっ…んんッ」 カナは淫らに腰を動かしていて、俺は抵抗らしい抵抗も出来ずされるがままの状態。 そのまま揺さぶられていると、何かが頬を伝って。 目を開けた途端、胸が詰まるような感覚に襲われた。 カナの泣き顔がそこにあった。 それを見て、頬を伝ったのはカナの涙だと知った。 「ふ…っく…ぁ…ひっ…」 嗚咽を漏らしながら泣いていた。 頬に次々と涙が伝ってシーツに吸い込まれていく。 それを見ただけでも苦しくなったのに。 「…お……ッ……ナオ…」 「…っ」 今までとは違う。 冷たい声ではない。 昔、呼ばれていたような声でもない。 こんなに胸が痛くなるような声で名前を呼ばれたことはなかった。 「ナオ…」 痛い。 「……ナオ…っ」 痛い、痛い。 痛くてたまらない。 「…う…ナ、オッ……」 またこれも夢なのか? カナがこんな風に俺を呼ぶなんて。 あり得ない。 でも、名前を呼ばれる度に、胸が痛くて。 夢なのか現実なのかもう分からない。 もうどっちだっていい。 抱きしめたい。 抱きしめて、涙を拭って。 今までごめんな。 好きだよって言って。 愛してるって言って。 また抱きしめる。 なのに、どうしてなんだろうな。 身体が全く起き上がらない。 抱きしめたいのに。 本当は好きって、愛してるって言いたいのに。 動かないんだ。 言葉が出ないんだ。 ああ。 泣かないで。 泣かせてごめん。 傷つけてごめん。 抱きしめられないけど、せめて。 せめて、涙だけでも—。 そこで俺の意識は途切れた。

ともだちにシェアしよう!