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閃光

すでに日は沈み、空は黒に染まっていた。 道を照らしているのは街灯の灯りだけで、歩いている人は少なく、そこには静けさが漂っている。 少年は一人、その道を歩いていた。 ただひたすら、歩いていた。 不思議なことに少年が歩く姿は、暗い道と同化しているように見える。 彼の姿は闇に溶け込んでいた。 その時、少年と前方から歩いてきた者の肩が接触した。 「…っ!痛ってぇ…おい!!どこ見て歩いてんだよ!」 少年と肩が接触した者は若い男だった。 男は少年に向かって叫ぶが、少年はそのまま歩き続けた。 「おい、聞いてんのか!」 少年は反応を見せない。 「…チッ」 男は舌打ちをすると、少年の方へと向かった。 「聞いてんのかって………っ!」 少年を振り向かせて、男は背筋が凍るような感覚を覚えた。 少年が生気の無い顔、まるで亡霊のような顔をしていたからだ。 顔色は悪く、覇気が無かった。 「……っ」 男は言いようのない恐怖に似たものを感じ、足早に去って行った。 少年もまた歩きだした。 少年ー奏斗は何も考えていなかった。 彼は何も覚えていなかった。 ある人物の家から、いつ自分が出て行ったのか。 いつからこうして、ひたすら歩き続けているのか。 自分が何をしたいのか、何を思っているのか、奏斗は全てが分からなくなっていた。 その所為で周りに気がつかなかった。 突然眩しいくらいの白い閃光が彼の目の前を覆い、耳を劈くほどの鋭い音が聞こえたー気がした。

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