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涙
予感がした。
「何度も、本当にごめんなさい…少しでいいんです、顔を見るだけでもいいんです。お願いします」
本当にそれだけでいい。
「まだ意識は戻っていないんだよ」
意識が戻ってなくてもいい。
「また今度来てくれたら…」
「『また』なんてないんです。多分…今しかない」
予感がした。
別に今日じゃなくていいのに。
意識が戻った時、退院して学校に戻ってきた時でいいのに。
間に合わない。
今じゃないとダメだと、そんな予感。
根拠なんかないけど、確信のようなものが何故かあった。
彼ー北見さんが溜息をついて、少し怯みそうになったけど踏ん張った。
殴られる覚悟は出来てる。
「…同じようなこと、考えてるとは思わなかった」
「え…?」
顔を上げると、想像していたのと違う、少し口元を上げた北見さんの顔があった。
「えっ…と、」
「名前同じだし、今俺が考えてたのと似たようなこと考えてるし、なんかちょっと笑えてきたかも」
これは…怒って、ない?
「あの…怒らないんですか?」
「…怒って欲しいなら怒るけど?」
「え?!」
ど、どういう反応をしたらいいんだ…?
「怒ってないと言えば嘘になるけど…一つ聞いていい?」
「…はい」
「どうして、あの子を虐めた?嫌いだから?」
「……カナのこと、嫌いじゃない。虐めていたのは、俺が弱くて臆病だったから」
カナのことを好きだと認めたくなかったから。
「異常」を「正常」に戻したかった。
そのくせ、支配欲と独占欲はあって、独りにして、アイツの頭の中を占めようとした。
嫌われるだとか、そんなこと関係なかった。
「でも、もう間違わない。逃げないって決めたんです」
カナと話せなくなってもいい。
どんな罵声を浴びせられたって構わない。
「…そう」
北見さんは一言だけ、そう言った。
そして、静かに離れていって、病室の扉の前で止まった。
「いいよ、カナに会わせてあげる」
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