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直
小学3年生の時、父親の転勤で引越しをすることになった。
仕方なかったけど今まで一緒にいた友達と離れることは寂しかった。
最後の日、クラスのみんなと担任がお別れ会を開いてくれて、みんなとゲームをしたりして楽しかった。
みんなから沢山手紙を貰い、とても嬉しかったのを覚えている。
これが一番いい思い出かもしれない。
新しい小学校に行くのは当たり前だが、とても緊張してその日は朝から落ち着かなかった。
「柊くん、これからよろしくね」
「……よ、よろしくお願いします…」
「そんなに緊張しなくて大丈夫だから」
新しい担任は優しそうな笑顔を浮かべながら言って、その柔らかな雰囲気に少しだけホッとした。
「そろそろ教室に行きましょうか」
そう言った先生に連れられて、教室まで行った。
「柊 奏斗です。よろしくお願いします」
転校生が来てそわそわしてるのか、キョロキョロとこっちを見たり目をそらしたりする子が数人いた。
「じゃあ、柊君の席はあそこ。あの窓際の空いてる席ね」
「はい」
俺は窓から見える景色が好きだった。
特に空を見るのは大好きで、だから窓際の席になったことは嬉しかった。
新しいクラスでの授業が終わると、いきなり後ろの方からポンと肩をたたかれた。
びっくりして振り返ると、
「俺、倉橋 直!よろしくな!」
ソイツは太陽みたいにキラキラした笑顔でそう言った。
その笑顔を見た時、何故か俺の緊張が一気にほどけた気がした。
「あ…俺は柊 奏斗。…よろしく」
これが直との出会いだった。
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