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直 2

新しい学校で、俺は初めて人に囲まれるという体験をした。 転校生だからというのもあったと思うが、休み時間になるといつも俺の席の周りにクラスの子が集まってきて、みんなで話をした。 転校初日は「前に住んでた所ってどんなとこだったの」とか「好きな食べ物は何」とか質問責めに遭って、どれから答えたらいいのか分からず上手く話せなかった。 俺が戸惑っていると、 「順番に質問しろよ。困ってるじゃん」 そう言って直はみんなの質問を止めた。 するとみんなは「ごめんね」と言い、そこから話しやすい雰囲気になった。 「ありがとう…倉橋くん」 「別にいいよ。名前も直でいいから」 直は明るく元気なタイプで、クラスのみんなから好かれていた。 よく話しかけてきて、俺をみんなの輪の中に連れていってくれたりもした。 おかげで俺は思っていたよりも早くクラスに馴染むことが出来た。 家も割と近かったようで、お互いの家に遊びに行くようにもなった。 そして、転校してから初めてのことはもう一つあった。 「すげーな、俺あそこまで人気者のヤツ初めて見た。前の学校でもそうだったのか?」 「ううん、前の学校は幼稚園から一緒の子がほとんどだったから、あんなに囲まれたのは初めて」 「ふーん…カナだから前の学校でもそうだったのかなって思ってた」 「こっちに来てからは初めてのことが多いよ。人に囲まれたり、『カナ』って呼ばれたこともない」 直は俺のことを『カナ』と呼んでいた。 「『カナ』と呼んでいいか」と聞かれた時、正直に言うと女子みたいだなと思った。 理由を聞くと「『奏』って字が綺麗で印象に残ったから」と言われ、なんだかくすぐったい気持ちになった。 まあいいかと思い、俺は「いいよ」と返事をした。 俺はナオに『カナ』と呼ばれることに、どこか特別なものを感じていた。

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