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直 4
俺は告白されても全部断っていた。
やっぱり付き合う気が起きなかったし、友達としてだけどナオと一緒にいる方が楽しかったから。
「付き合ってる人がいないんだったら…」
そんなこと言われても無理だ。
好きじゃない子と付き合うなんて。
「ごめん…」
「好きなの!お願い…」
なかなか諦めてくれない子もいて、俺は頑張って説得したこともあった。
ある日の放課後のことだった。
俺はその日、職員室に用があってナオが玄関で待っていてくれていた。
用を済ませて玄関へ向かうと、ボソボソと話し声が聞こえる。
そっと覗いてみると、ナオと女子が話しているのが見えた。
「カナにだって自分の気持ちはあるんだよ。俺が言ったからって付き合うようなヤツじゃない。それにそんな理由で付き合いたくないだろ?お前いいヤツなんだし、お前のことを好きで大事にしてくれるヤツがきっといるよ」
ナオはそんなことを言っていた。
もしかして女の子たちは納得していなくて、ナオのところに来ていたんだろうか。
それじゃあ、ナオが今までこうやって女子たちに言っていたのか。
悪いことしちゃったな。
「いいヤツ」と言われたからか、その女子は少し顔を赤らめて「そうかな」と照れたように言った。
ナオは少し鈍感な所がある。
自覚しているのかどうか分からないけど、ナオは格好良く整った顔立ちをしている。
これにも全く気づいていないと思うけど、あの子はナオに好意を持ったかもしれない。
熱っぽい視線を送ってる。
これからナオのことを好きな子が増えるんじゃないかと思うと、気が重くなった。
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