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直 7

ナオが、言った。 俺が、女が無理だって。 そんなの。 「嘘…」 「嘘じゃねえよ?ちゃんと聞いたし」 「聞い、た…?」 そんなのあり得ない。 俺はナオにだって言ってない。 本当に誰にも言わないで隠してきたんだ。 ずっと、必死に、隠してきたんだ。 「おっ、倉橋」 ナオが教室に入ってきた。 「何?」 「ナオ…」 なあ。 嘘だよな。 ナオが言っただなんて。 ナオはそんなこと……… 「 こいつ、ホモだよ 」 「…は」 ナオ? 「奏斗、女が無理なんだよ。だからいつも断ってた」 ナオ…? 何言って……。 それに、「奏斗」って……。 「それにさ妙に近いんだよな、話す時。やたらとベタベタしてくるし、鬱陶しかったなー。ムカつくし、一緒に行動するの嫌だった」 「うっわ、マジで?」 「え、友達だったんじゃねえの?」 「 友達じゃねえ 」 なにそれ。 俺は友達だとも思われていなかった? 「ホント気持ち悪いよ、お前」 ナオは俺を見て、そう言った。 本当に「気持ち悪い」、「汚いモノ」を見るような顔だった。 その瞬間、目の前が暗くなった。 何もかも嘘だった。 ナオは俺のことを友達とは思ってなかった。 あの眩しい笑顔も、 全部嘘だった。

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