60 / 111

地獄

こんなに朝がきてほしくないと思ったことはなかった。 周りの目が怖い。 俺が通ると、みんな端に寄ってヒソヒソと話す。 何を言われているか、聞こえなくても大体分かった。 これから何がある? 俺はこれからどうなるんだ? 怖い。 心臓が、うるさい。 ずっと、さっきから、ドクンドクンって、 「おはよー、柊」 「—っ!」 …あ………。 「どうしたんだよ、そんなにビビって」 後ろにクラスメイト3人がいた。 「大丈夫かー?」 怖い。 発せられる言葉が、怖い。 全然心配してない顔。 だって、顔が笑ってる。 嫌な笑顔だ。 「な、トイレ行かねえ?」 一人がそう言うと、他の人2人は「俺も」と言った。 「じゃ、行こうぜ」 誰かが俺の肩に手を乗せる。 その瞬間、そいつが触れたところから何かがぞわぞわと這い上がってくる感覚がして、咄嗟に手を払いのけた。 「…ぃってーな!」 そんな声とほぼ同時に、衝撃が走った。 何が起こったのか、一瞬分からなかった。 左頬の鈍い痛みと、自分の顔がいつの間にか右を向いていることから殴られたんだと分かった。 「いいから来いよ」 放心している間に、腕を掴まれ、無理矢理連れて行かれる。 ハッとして、必死に抵抗した。 でも、誰も逃してくれなかった。 誰も助けてくれなかった。 トイレの前まで行くと、そいつらは乱暴に俺を押し込んだ。 そのせいで、前に倒れるように躓いてしまう。 「…痛っ」 起き上がろうとしたその時だった。 ーバシャッ! 「わっ?!」 いきなり上から冷たい何かが落ちてきた。

ともだちにシェアしよう!