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地獄 2
ボタボタと水滴が落ちる。
自分の周りには、大きな水たまり。
髪の毛から、水が流れて、水たまりに落ちていく。
…水、かけられたんだ。
背中が、冷たい。
服が、重い。
服が、貼り付いて、気持ち悪い。
「ははっ、やべー、ビショビショ」
「お前もっと上手くかけろよ。俺まで濡れちゃったじゃん」
「えー、ゴメンゴメン」
みんな、楽しそうに笑ってる。
胸の辺りが、重い。
みんなの笑い声が聞こえるたびに、重くなる。
心臓が、またうるさくなってきた。
ドクンドクンって、自分でもびっくりするくらいに早い。
「何してんの?」
後ろから、声が聞こえて、
(助けて、くれる…?)
そう期待した。
今思えば、あの時の俺はバカなことを考えていた。
誰なのか分かっていて。
助けてくれるだなんて、そんなことを思った自分に嗤える。
あいつが、助けるわけないのに。
「床に手ついてるし。きったねえな、お前」
「……ッ!」
ナオまで……。
ゴミでも見るような目。
なんで、なんでそんな目で見るの…?
昨日、俺はなんて言われた?
「気持ち悪い」って、「友達じゃない」って言われた。
…………ああ。
なんだ、そっか。
元々そうだったんだ。
俺が、勝手に好きだとか、友達だとか思ってただけなんだ。
ナオにとって俺は、なんでもない存在。
夢だと思ってたのに。
嘘だと思いたかったのに。
ナオの、俺を見ている表情が、嘘じゃないことを示していた。
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