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地獄 3
「……う…」
……寒い。
身体が、冷たい…。
あの後、すぐに予鈴が鳴って、みんな急いで出て行った。
それから俺は、ずっと一人で個室のドアの前で蹲っていた。
ここは、あんまり使われていない北校舎のトイレだ。
見つからないように、そこを選んだんだろう…。
…………どうしよう。
制服はびしょ濡れで、教室に戻れない。
替えの制服なんて持ってない。
学校に居たくない。
というより……誰にも会いたくない。
俺は、その日初めて無断欠席をした。
早くあの場所から出て行きたかった。
歩いてる時、何人かジロジロと見てきたが我慢した。
見ないで。
俺を、見るな。
早く家に着いて。
それだけを考えていた。
母親はこの頃、平日は朝から仕事をしていた。
帰ってくるのは夕方で、それまでは家に誰もいない。
だからこの日の俺は一人になれる場所は家だと判断し、帰ることを決めた。
家に入って、真っ先にシャツを脱ぎ、洗濯機に放り込む。
ズボンはどうすればいいのか困ったが、とりあえずベランダに干した。
「…うっ……」
嫌だ。
こんなのが、ずっと続くなんて。
これから、ずっと、ひとりぼっち。
なんで、俺はこうなったの?
頑張って隠してきたのに!
「ぅわあぁ…っ!」
嫌だよ……こんなの、いやだ。
「…ひっ…く」
誰か、助けてよ……。
『友達じゃねえ』
俺の周りには、だれもいない。
俺は、最初から独りだった。
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