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終わらない
中学を卒業する頃に、また父親の転勤が決まった。
今度は海外だということだった。
母親は家事が全く出来ない父親に着いていくことになり、もう高校は決まっていた為俺は一人暮らしをすることになった。
「一人だけど、大丈夫?何かあったら絶対言うのよ。たまには連絡ちょうだいね」
「分かった」
「しばらく会えないが、長い休みには帰ってくるようにするからな」
「うん。…いってらっしゃい」
高校は、出来るだけ遠い所を選んだ。
知らない場所に行きたかったから。
誰も、俺を知らない場所に行きたかった。
やっとここから出られると思っていたのに。
アイツは俺を逃さなかった。
「クラス、一緒だったな。高校でもよろしくな」
—パシッ
近づいてきた手を思いきり払いのけた。
「触るな」
満足そうな、嫌な笑みを浮かべている顔を思いきり睨みつける。
「おっ、こわ。そんな顔すんなよ」
そんなこと微塵も思ってないくせに。
「奏斗、お前俺から逃げようとしてたの?…馬鹿だなあ、そんなの許すわけないだろ。お前には一人がお似合いだよ。『気持ち悪いヤツ』なんかとは一緒にいたくないのが普通だろ?誰もお前とトモダチになりたくないんだよ」
……『キモチワルイ』。
「お前は、ずーっと一人だよ」
入学式の日、直はそう言った。
***
そうしてまた始まった。
教室では、ゴミ箱扱い。
バケツの水に顔を突っ込まれる。
好き放題に殴られる。
「ゲホッ、がっ…はっ……」
「おい、吐くんじゃねえぞ」
さっきから、ずっと気持ち悪い。
腹の辺りがグルグルしてる。
「まだまだなんだから…さ!」
「がっ…!」
腹に蹴りを入れられた瞬間、もう無理だと分かった。
…何かが、せり上がってくる。
何か、逆流してくる。
「ゲホゲホッ……ぅ…おえっ」
人の前で、吐いてしまった。
「ちょっ、こいつマジで吐いた!」
「うっわ汚ねえ!」
「…ッ、」
こんな奴らの前で…最悪だ。
そう思っていると視界が揺れて、顔を地面に押しつけられていることを知った。
「ぐっ…」
「汚ねえじゃん、何してんの?」
「…っく…」
「なあ、地面汚れたじゃん。掃除しろよ」
「掃除ってマジ?」
「倉橋、鬼畜過ぎだろー」
直が、俺の頭を踏みつけている。
ちょうどさっき吐いたものがある場所。
そのせいでまた気持ち悪い。
惨めな気持ちと吐き気でおかしくなりそうだ。
急にガッと髪を掴まれ、無理矢理顔を上げさせられる。
「汚ねえ顔」
直はまた満足したような顔で嗤っていた。
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