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侵される 3
まさか…見てた?
何故か、背中に冷たいものが流れたような心地になる。
直の表情は怒りに満ちていた。
「なに…」
なんだ、こいつ。
なんか……いつもと違う?
戸惑っていると直はそのまま歩き出した。
「なっ…離せよ?!おい!」
腕を払おうとしたり必死に抵抗する。
なのにビクともしない。
「うぜえ」とも「おとなしくしろ」とも、何も言われなかった。
俺のことは完全に無視。
「離せって!」
ずっと大声を出してるから、周りがこちらを見てくる。
それでも聞いてない。
玄関に入っても自分だけ靴を履き替えて、その間も掴んだまま。
こいつ……どんだけ力強いんだ。
全然振りほどけない。
またぐっと引っ張られ、スニーカーを履いたまま連れて行かれた。
直は空き教室の前で止まったかと思うと、俺を乱暴に押し込んだ。
ガチャッ、と音が聞こえた。
「おい、なんで鍵…っ」
「あれ、誰」
かけるんだよ、と言おうとして、逆に質問を被せられた。
「……は?」
「今の男、誰だって聞いてんだよ」
なんだ?
いつもなら俺を嗤うのに。
……それよりも。
そんなこと聞いてくるこいつに腹が立つ。
「お前には関係ない」
思ったことを、そのまま言った。
その瞬間だった。
思い切り髪を掴まれて、机に顔を押し付けられた。
「ぐっ…!」
「ああ、関係ねえよ。でもな、お前のその幸せですって顔を見ると吐き気がするんだよ」
そう言った直の表情には、殺意があった。
本当に殺されるかもしれない、とさえ思った。
でも恐怖はすぐに消えて、代わりに怒りがこみ上げてきた。
どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだ。
なんで、お前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ。
「 壊してやる 」
沸々と湧き上がる怒りを感じながら、そんな宣告を聞いた。
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