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消えてしまいたい。 まだ殴られた方がマシだった。 もう出ないと思っていた涙も溢れた。 いつの間にか家に帰っていて、シャワーを浴びていた。 どうやって帰ってきたか分からない。 そもそも、今何時だ? 考えながら浴室を出ると、あちこちに制服が散らばっていた。 あ、思い出した。 気持ち悪くなって、帰って、シャワー浴びたんだ。 着ている制服すら汚いものに見えてきて、捨てるように脱いだ。 拾おうとシャツに触れて、さっきの感覚が蘇ってくる。 あいつが俺のシャツに触れた。 思い切り引っ張られて、ボタン外されて、弄られて、ズボンも下ろされて。 それで、それで—。 —バンッ! 洗濯機の蓋を勢いよく閉めた。 全部洗う。 全部消すんだ。 全部洗い流したいのに、身体には痕が残ってる。 擦っても取れない歯形の痕。 鏡を見ると、首筋にくっきりと付けられていた。 でも、歯形とは別の痕もそこにあった。 …何だこれ。 吸い付かれたような痕。 歯形と重なるように付けられている。 まさかこれも?と思ったが、噛まれた感覚しか思い出せない。 じゃあ、これは……。 『一応気をつけてね。見られないように』 もしかして今朝言われてたのは、このこと? 体育があるかどうかを聞かれたし…。 …そうか、痕のことを言っていたのか。 後ろの方にあるから気がつかなかった。 見られないようにって言われたけど、見られちゃったな。 「………」 そっと噛み跡をなぞる。 ……物凄く怒ってた。 いつも余裕の表情で、俺のことを嘲笑ってたのに。 あんな顔、初めて見たかも。 あの顔………もう一度見てみたい。 あの余裕に満ちていた顔を、歪ませたい。 この赤い噛み跡を付けた時、どんな顔をしていたんだろう。 考えると、ゾクゾクした。

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