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復讐

『お前のその幸せですって顔を見ると吐き気がするんだよ』 今ならその言葉に同感できる。 確かに全てを壊したくなる。 だから、いいよな? 「遅くなるみたいだから先帰っててもいいよ」 「分かった。じゃ、また明日な」 「本当にごめんね」 簡単に一人になるんだ。 好都合だ。 互いを信じているのかもしれないけど、それも壊してやるから。 「直」 逃げられるかと思ったけど、そんなことはなく直は振り返った。 その顔はなんとなく怯えていて、俺を楽しい気分にさせた。 「さっきの子…可愛いね。……素直って感じがして」 「………」 何も言わない。 「……ちょっと来て」 腕を掴むと直は身体を震わせたけど、抵抗もせずおとなしくついて来た。 良かった。 罪悪感は消えてないみたいだ。 それでいい。 そのままでいい。 俺は心底安心した。 「……直、欲求不満だったんだな」 「……………は?」 何言ってるんだ、って顔してる。 その顔がちょっとマヌケで、笑いそうになった。 何か間違ったこと言ったっけ。 「だから俺のこと襲ったんじゃないの?」 「ちがっ…」 「違うの?」 別に今更否定しなくていいのに。 「まあいいや。どうでもいいし」 そんなこと、本当にどうでもいい。 これからは俺が遊ぶんだから。 近づいてズボンに手をかけると、驚いたように直の身体は跳ねた。

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