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破壊
嫌いなもの。
余裕ぶった顔。
聞くだけで胸が悪くなる声。
あいつの全て。
全部壊してしまおう。
あいつを縛り付けるのに邪魔なものはあの女。あいつの大事なものも、多分同じ。
もう一緒に帰ったりはしてない様だった。
十分とも思ったけど、もうちょっと壊そうかな。
もう二度と元に戻れないように。
「君、直の彼女だよね」
廊下にいた彼女に声をかけた。
「えっ……あの…?」
知らない人間に声をかけられたら誰だって警戒する。
予想通りの反応だ。
とりあえず笑顔を作って話しかけた。
「俺は柊 奏斗。あいつの幼なじみなんだ」
「…倉橋くんの?」
「あいつの幼なじみ」と言っただけで相手は反応を見せ、警戒心もほんの少し和らいだのが分かった。
「霧島さん、だっけ。直と喧嘩でもしたの?最近一緒に帰ってないみたいだけど」
「………」
躊躇うような表情。
まあ、簡単に理由を話すとは思ってないけど。
「何があったのか俺は分からないけど、直は後悔してるみたい。あいつと話してやってくれない?」
少し考えるような素振りを見せて、彼女は口を開いた。
「…………いきなり、何も理由を言わないで、もう一緒に帰れないって言われたの…。私何かしちゃったのかなって…」
へえ。
そうだったんだ。
理由も言わずに、ね。
大事にしてるね。
苛々する。
「そうだったんだ…。直は俺にも話してくれなくて、それでも今、霧島さんとちゃんと話したいと思ってるって言ってた。明日の放課後、自習教室に来てくれる?直も連れて行くから」
「え…?」
「あいつ、話したいって思ってても勇気出ないみたいで。だからちょっと手伝ってやろうってね」
彼女は黙ったまま、俺の顔をじっと見ていた。
その瞳に居心地の悪さを感じた。
「なに?」
耐え切れずに聞くと、はっとしたような表情になる。
「あ…ううん、なんでもない。…ありがとう」
彼女は「明日の放課後、自習教室に来る」と約束した。
これでもうこいつらは戻らない。
全部終わりだ。
けれども、彼女のまっすぐな瞳が与えた居心地の悪さはしばらく消えなかった。
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