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破壊 2
そうして彼女は、約束通り教室に来た。
二人で教卓に凭れかかるような格好。
俺のシャツのボタンは全開で、腕は直の首に回している。
ただの幼なじみには見えない光景だろう。
「…ぁ……ごめんなさい………」
彼女はショックを受けたような、何が起きたか分からないような表情で出て行った。
「ああ、ごめん。彼女も呼んでたの、忘れてた」
同じような顔をしている直。
あーあ、見られちゃったね。
「霧島は関係ないだろっ……」
その顔を見た時、これだと思った。
「…クッ…ハハッ……」
そう、そうだ。
「何…笑ってんだよ……」
「その顔だよ。お前のその顔が見たかった」
どうしよう、違うんだ、誤解だって顔。
どうしてあいつまでって思ってる顔。
絶望してるような顔。
ずっと見たかった。
直の女を追う姿に堪え切れず声をあげて笑った。
「あはっ…、アハハハッ!」
追いかけたって意味ないのに!
バカじゃねえの!
もう全部壊れたんだよ!
お前が大事にしてたあの女との関係だってもう終わりだ!
「…っ、……やっとだ」
やっと、あいつは独りになった。
邪魔な女も消えた。
これでお前には誰もいない。
全部お前のせいだ。
俺は悪くない。
お前はあの頃の俺を殺した。
あの女だって、お前を好きにならなければこんなことにならなかった。
全部お前が招いたことだ。
「ナオ……」
お前は幸せにならないで。
これからは、ずーっと、おもちゃでいてね。
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