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本心 2

「……お久しぶりです」 直の母親だった。 この人と最後に会ったのは、中学に上がってからすぐの頃だったか。 向こう側に見覚えのある直の家が見えて、気づかないうちにここまで来たんだと分かった。 「ほんとに久しぶりね〜」 長い間会っていなかったけど、あの頃と変わらず美人であまり見た目が変わってないような気がした。 「それにしても奏斗くん…相変わらず綺麗な顔ねぇ。背も伸びて格好良くなって、見惚れちゃうわ」 「いや、そんなことないですよ…」 おばさんのことは嫌いじゃない。 久しぶりに会ったけどこうやって変わらず接してくれる。 でも直の母親だと思うと、どこか線を引いてしまいそうになる。 ふと気になって、あることを聞いてみる。 「あの…今日直が休んでたんですけど、具合悪いんですか?」 「あの子、熱出しちゃってねー。今休んでるのよ」 「……そう、だったんですか…」 「仕事入っちゃったから行かないといけないんだけど、一人で大丈夫かしら…。あの子あんまり台所に立たないから…」 熱……そんなにショックだったのか、昨日のこと。 ……ああ、なんだかまた嫌な気持ちになってきた。 ぐるぐる、ぐるぐると、暗い感情が渦巻いている。 「俺、様子見ましょうか?」 「えっ?でも、迷惑じゃない?」 「大丈夫ですよ。今日は何も予定ないし、俺も心配なんで」 「そう…?じゃあ、お願いしちゃおうかしら」 何も疑われないまま、鍵を渡された。 おばさんを騙してると分かってたけど、止まらなかった。 「一応お粥を置いてるから」 「分かりました」 後ろめたい気持ちを振り払い、そのまま進もうとした。 「奏斗くん」 —ビクッ! 呼び止められ、足が止まる。 …なんだ? 何か、気づかれた…? 「なんか痩せてない?ちゃんとご飯食べてる?」 「えっ、まあ…」 「しっかり食べなきゃダメよ。また昔みたいに食べに来てね」 おばさんは知らないんだ。 今でも俺と直が友達だと思ってる。 「……ありがとうございます」 心からそう信じ切っているこの人に、本当のことは言えなかった。

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