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本心 7
だらしなく喘いでいるところを見られている。
ああもう駄目だ。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
きっとそう思われてる。
「っ…ふ…っく…ぁ…ひっ…」
目の前がぼやけて見える。
パタッと音がしても、どこに落ちたのか分からない。
……何を泣く必要がある。
そんなこと思われるのは、初めてじゃないだろ。
分かってたことじゃないか。
俺が「気持ち悪い」って。
なのに。
「…お……ッ……ナオ…」
なんで傷ついてるんだろう。
「……ナオ…っ、…う…ナ、オッ……」
こうやって呼んだって、意味が無いのに。
俺を見てくれるわけないのに。
本当に友達でもよかったんだ。
その先は望めないのは知ってたから。
ただ、ナオにだけは嫌われたくなかった。
好きだったから。
友達だと思ってたのに、それすらも嘘だったのは思ってもいなかった。
ナオに対して抱いていた好意は、悲しみから憎悪に変わって。
信じてたのに裏切られて、自分一人だけがこんな感情を持っているのが嫌で、悔しくて、許せなかった。
散々好き勝手してくれたんだ。
俺も好きにさせてもらう、一生縛り付けてやるって。
それでも俺には、二人の仲を完全に裂く力はなかった。
なんで壊れないんだよ……。
これじゃあ俺は独りで空回ってるピエロみたいじゃないか。
独りだけナオの為にもがいて苦しんで。
どれだけ名前を呼んでも、ナオは俺に見向きもしない。
少しだけでいいから、俺のことを見てよ。
嘘でもいいから………「好き」って言って?
「……っ、」
ゆっくりと下にいるナオが手を伸ばし、泣きそうな顔でこちらを見ていた。
戸惑ったけど、すぐに力尽きたのかその手はぱたりと倒れ、もう目も開かなかった。
「ごめんなさい」
こんな気持ち悪い感情を持って。
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