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お願いだから

俺の異常な感情は消えていなかった。 「憎悪」の奥にあったのは、あの行き場の無い想い。 持っていてもどうすることも出来ない感情。 側にいたい。 嫌われたくない。 俺を見て欲しい。 俺と同じ気持ちでいてくれたら。 叶わない願望は知らない間に大きくなっていた。 本当は分かってた。 ナオは間違ってない。 ナオが言っていた「気持ち悪い」というのは、事実だったから。 秘密にしていても、知らない間に表に出ていて、そんな気持ちを与えてしまったのかもしれない。 男に好かれてるなんて、嫌なことに決まっている。 一番の元凶は、男が好きな俺だったんだ。 **** …………なんだか、あったかい。 何か…誰かが俺に触れてる? すごく安心する…。 ずっとこうしていたい。 誰……? 「…カナ……?」 ………ナオ? なんで……ナオがいるの? ここ、どこ? なんで寝てるんだ? 俺は……どうしたんだっけ…。 「あ…、大丈夫か?……奏斗」 「……っ、」 「奏斗」と呼ばれて、何かがグサッと刺さり、今までのことを思い出した。 俺は……そうだ、俺はナオにー。 「…今出るから、安心して。北見さん、呼んでくるから…」 ナオは俺を見ようともせず、早口で言いながらここを出て行こうと扉へ向かう。 「今まで、本当にごめん。……もう、関わらないようにするから」 背中を向けたままナオは言った。 ……ナオが、行ってしまう。 もう二度とこんなことは起きない。 目が覚めるとナオがいるなんて、もう無い。 本当に関わらない、ただの他人になる。 これで終わりなんだ。 嫌だ! 後ろ姿に手をのばし、バランスを崩してベッドから落ちてしまった。 「どうした?!苦しいのか?」 音を聞いて、すぐにナオは戻ってきた。 それだけで嬉しいと思える。 ナオ、お願い。 これで最後にするから。 振り払うかもしれないけど、本当に最後だから。 「行かないで……」

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