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疑心暗鬼と幸福 2

通知も何もない画面を見て、じっと固まった。 連絡、ない。 なんにもきてない、なんで。 連絡するって言ってたのに。 ……ああいや、まだ来てないだけかもしれないし、そんなに気にすることじゃない。 待ってればくるよ。 本当に? …くるよ。 ー本当にくる? 大丈夫、ナオはちゃんと連絡くれる。 ー本当にそう思ってる? だから気にしすぎだ。 ーナオは本当に約束してくれた? 約束してくれたのは、本当かな? 「……っ、」 自分で考えたことに怖くなった。 違う、本当だ。 ナオは「もう独りにしない」って言ってくれた。 ー夢だったりして。 違うよ、違う違う違う。 ちゃんと分かってる。 夢じゃないってことは分かってるんだ。 なのに、なんでこんなに不安なんだろう。 怖い。 ナオのこと信じたいのに、本当はどう思ってるんだろうとか考えてしまう。 分かってても不安で、自分から電話をかけるのも躊躇ってしまう。 その時、着信音が鳴り響いた。 画面にはナオの名前が表示されている。 それを見た瞬間、俺の中にあった暗い霧は一気に晴れた。 「……はい」 『あ、カナ?』 よかった、ナオの声だ。 『ごめん、もしかして寝てた?』 「……ううん、ちょっと前に起きてたから…」 さっきまでの様子はバレないようにしないと。 心配かけたら駄目だ。 そう思ってたのに…… 『……お前、なんか声震えてねえ?』 「え………何言ってんの。別にそんなことないと思うけど」 平静を装う。 ナオは腑に落ちないようだったけど、俺が何もないと言い張るとそれ以上は言ってこなかった。 少し話して電話を切ると、また部屋は冷たくなった。 自分でもこんなにナオに縋っているとは思ってなかった。 少しでも離れると怖くなるなんて。 弱くて、本当に情けなくなってくる。 こんな俺を知ったら、ナオはどう思うんだろう。 弱い俺なんか、知らないでいて欲しいよ。

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