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疑心暗鬼と幸福 4

「ナオは凄いよな…」 「え、何が?」 俺が怖いと思ってたことをいとも簡単に取り払うから。 「ちょっと単純なだけかもしれないけど」 「だけって酷くね?」 昔もこんな感じだった。 転校してきたばかりで、ちゃんとやっていけるか不安だったのがナオに話しかけられたことで和らいだ。 もしかしたら、あの時から惹かれてたのかもしれない。 「あのね、ナオ」 「…うん?」 「好きだよ」 すっ、と自然に出た言葉。 俺の本当の気持ち。 「俺も。カナが好きだよ」 いきなり「好き」だなんて言ったから驚いてたけど、すぐに言葉を返してくれる。 目が合って、くすくすと笑いあって。 また目が合って、引き寄せられるように、唇を重ねた。 それは自然な感じだった。 すぐに終わって、また引き寄せられる。 唇と唇を重ねるだけのキス。 だけど合わさった時が凄く幸せで気持ち良い。 幸せすぎて、涙が出た。 「嫌だった…?」 泣いてることに気づいたナオが聞いてくる。 「違うよ……。すごく幸せなんだ、今」 「……ッ、やべ……俺も泣きそう」 キスで泣くなんて、お互い一度も無かったと思う。 こんなに内から溢れ出る幸福感を感じたのは初めてだった。 角度を変えたりして、何度も繰り返す。 何回しても足りなくて、する度にもっともっとと貪欲になっていく。 もっと、もっと深くまで。 ナオが俺の頭の後ろを軽くおさえて、ぐっと距離が近くなる。 俺も背中にしがみつくと、さらに近くなった気がした。 心臓の音がよく聞こえて、耳に響く。 一旦離して、見つめ合う。 ナオの表情がさっきと違うのは、多分気のせいじゃない。 少し口を開けたのは無意識だった。 ナオも少しだけ開いていて、それを見て気がつくとそうしていた。 「……んッ…」 舌が入ってきて、くぐもった声が出る。 深くて、息継ぎも難しくて、それでも欲しくて。 「ん、ん…っ、…はぁ、」 「はっ、は……んッ!んむ…ん、」 貪るようなキスに俺もナオも必死になる。 ナオのキスは全部持っていかれそうで、しがみつくのに精一杯だった。 「ふ…んんっ、んぅ……、はぁっ…はあ、」 目の前が妙にぼやける。 頭がクラクラする。 身体中が熱い。 いつの間にか俺の上にナオが覆い被さるようにいて、その瞳には情欲が滲んでいた。 「………ッ!」 瞳を見た瞬間、全身が震えた。 恐怖と歓びで。 今この瞬間、そうしようと思えばできる。 それなのに。 「触っていい…?……触りたい。嫌だったら突き飛ばしてもいいから」 お互いの息は荒くて、止められそうな空気なんて無いのに聞いてくる。 本当は「触りたい」だけじゃないかもしれない。 さっきの話をふと思い出した。 情欲の中に少しだけある、迷い。 …そうか。 ナオも、不安なのは同じだった。 俺が本心を言えば、安心するのかな。 「………ナオ、俺も…ナオに触りたい……もっと欲しい。嫌なんかじゃない…。……触って……?」 引かれると思ってた。 言った後、恥ずかしくて後悔したけど、そんなのに浸る間も与えられなかった。

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