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第20話

「うっ.....」 「スバルさん.....」 ボロボロと溢れる涙が止まらない。 とまれとまれ、と唱えても一向に止まりそうにない。 せっかく綺麗に造った顔も台無しだ。 涙を拭った手に黒くマスカラがつく。 「スバルさん...そっち行って良いですか」 元よ僕の返事なんて期待していない久保さんはそう聞くと、返事を待たずに中に入ってくる。 「スバルさん.....泣かないで」 僕の頭だけを抱え込むように抱き締めると、綺麗に折り畳まれたハンカチで僕の頬を拭う。 「っ.....久保さん...いいよ...汚くなっちゃうでしょ...」 現に久保さんのハンカチにファンデーションが付いてしまっている。 でも僕の制止も聞かずに拭い続ける彼の真剣過ぎる顔。 「スバルさん、可愛い」 もうほとんど化粧も禿げてしまった。綺麗なわけない。 化粧拭きシートで拭ったわけでも、洗ったわけでもないからところどころ残っているだろうし、肌に悪い。 こんな時でも女の子みたいなことを考えてしまう。 「どこが可愛いって言うんです?もう化粧もしてないし、男ですよ.....」 「スバルさんはお化粧なんてしてなくても充分素敵なんですから」 慈しむように撫で続けられる僕の背中の感触。 この人を信じてもいいのだろうか。

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