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第19話

「あのねぇ!」 「なんでそんなに俺のこと跳ね除けるんです?俺が適当な気持ちでスバルさんに告白したとでも思って怒ってるんですか?」 どんなに言っても分かってくれなくて、つい語気が強くなった私に首をかしげる久保さん。 イライラに任せて彼の方を向いたから当然バッチリと目が合う。 やっぱりカッコイイ。どうしようもなく。 弄ばれていて告白されていたとしても許してしまうくらいにはカッコイイんだもの...。 告白がどうとか、それが嘘か本当かなんて関係ない。 本当は久保さんに怒ってなんていないんだ。 それでも彼に対して冷たくしてしまうのは自分の(きたな)さを分かっているから。 こんな私でごめん。 こんな僕で.....ごめん。 久保さんの抱くイメージの僕と、リアルの僕にはかなりのギャップがあった。 「そんなこと...思ってません。久保さんがそんな人だなんて思ってません」 「じゃあ何で...。俺はスバルさんのことをもっと知りたいんです。冷たくする理由を教えてください。言ってくれないとわからない」 つい先ほどまで浴びるようにアルコールを摂取していたとは思えないほど淡々と語るので、私の出していたものが水なんじゃないかと錯覚する。 黙ってしまった私に責めるでもなく、急かすでもなく、ただ私が答えを出すのを待つ久保さん。 「...私が.....」 「うん」 こんなに優しい相槌(あいづち)を打ってもらったことがない。 ちゃんと聞いてるよって主張の相槌じゃなくて、焦らずゆっくり聞くための体制。 「僕が.....っ...穢いから...」 「スバルさんが...きたない.....?」 一瞬意味がわからないと言う表情を浮かべ、ぽたぽたと僕の(あご)を伝って落ちていく雫を見ると、すかさずハンカチを取り出した。 「言ってる意味がよくわかりません。スバルさんは穢くなんてない」

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