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第3話

「あれ...?スバルさん?」 「えっ?」 今はまだ日が高い。 今日の店で使う食材をスーパーに買いに来ていたところだった。 もちろん、メイクもウィッグも無しで。 「あ...久保さん」 「やっぱりスバルさんだ」 ニコッと笑いかけ、近づいてくる彼にずっと会いたかったはずなのに拒んでしまいそうになる。 彼とは綺麗な姿で会っていたかった。 「こうしてそのままの姿のスバルさんと会うとやっぱり男性だったんだーってわかりますね」 「え...」 「あっ、ごめんなさい。でも俺、そのままのスバルさんもカッコイイと思ったので...つい...。そういうこと言われるの嫌だったならごめんなさい...」 店の外で男性の格好のままでいる僕に店での『スバル』と同一人物だと気づかれることはほぼない。 それなのに彼は1度しか店に来ていないのに、僕と『スバル』が同じ人だとわかったのだ。 なんだか運命のようでウキウキしてしまう。 「いや...男のままの格好してて『スバル』だって気づかれたことなかったからびっくりして.....。カッコイイって言われるの嫌じゃないですよ」 僕が笑いかけると彼は安堵の表情を浮かべた。 前あった時はカウンター越しで、しかも彼が座っていたから気づかなかったけれど、 彼はとても身長が高い。 そんなところまでかっこいいなんてずるい.....。 「スバルさんもこの近くに住んでるんですか?」 「あ、はい。すぐ近くに最近できた高いマンションあるでしょう?前までお店の近くに住んでたんですけどせっかくだし、静かなところに住みたいなって先月から」 ネギを持ったまま少し驚いた顔をする久保さんに笑ってしまいそうになる。 「えっ。最近できたマンションてもしかして、銀行の横に出来たマンションですか?」 「ええ。静かだし、それでいて周りになんでも揃ってていいところですね。久保さんも近くですか?」 「近くも何も...僕もそこの最上階に住んでますよ...」 「.....え?」

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