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第8話

何?何!?あれはどういう意味なの!? 久保さんは僕が気になってるってこと!? 「っわっ.....!!!いった.....」 久保さんの部屋から1階降りれば僕の部屋。 階段を駆け下りた僕は普段から運動しないことが祟ったのか、脳に体が追いつかず、足が絡まった。 足首に痛みが走る。 「ぅー.....さいあく.....痛いし、久保さんわけわかんないし...」 もう泣きそうだよ.....。 昼まで仕事に行ってる人ばかり。踊り場にはうずくまる僕が1人。 泣き叫びたい衝動に駆られる。 「.....スバル?...」 「.....戸田くんだ.....」 コンクリートの地面にへたりこんで足首を抑え、自分を見上げる僕の呆けた表情に彼は笑いがこみ上げてきたようだ。 「そーよ戸田くんよ。スバルお前...何してん、くくっ」 「わっ笑わないで!足捻っちゃったんだもん!」 「あーあ。お前運動神経昔っから悪かったもんなぁ、くくっ」 笑わないでと言ったのに、彼は定期的にやってくる笑いの波に流されて抑えているつもりだろうが笑い声が聞こえる。 「戸田くんこそ何しに来たの!」 「そんなんここのマンションの知り合いなんてスバルしか居らへんやろ。スバルに会いに来たんやて」 「けど、僕はもう1階下だよ」 不思議に思って尋ねる。 「ああ。それはー、スバル居らへんのかぁー。じゃ、帰ろ。ってエレベーターのとこまで来たら、階段からえらい音するやん。で、来たらお姫様がへたりこんでたってわけや」 「おっお姫.....!?」 「あ、知らんかったん。大学の時裏で姫姫言われとったの」 「しっ、知るわけないだろ!!」 自分でも顔が火照っているのがわかった。 そんな自分の頬にピンッとたてた戸田くんの人差し指が突き刺さる。 ツンツンなんて可愛らしいものじゃない。 グリグリ、と言った感じ。 「照れてん?かーわい」 「もう!そう言うのいいから!てゆーか何!?僕に用?」 「んー。用が無ければ親友のところ遊びに来ちゃいけないんや」 「.....何が親友だよ」 意識して低い声を出し、睨んでみたけど彼には逆効果だったようだ。 「ふふん、そそる〜」 「戸田くんいい加減にしてよ…...。僕今日はもう限界なの。疲れてるの。仕事まで休ませてよ.....」 「えー。久しぶりに会いに来た親友追い返すわけぇ?」 心も体もお疲れ気味の僕に、テンションの高い友人の声は頭に響く。 「ほんとに今日はもう.....」 「連れへんなぁ.....。ね、足痛いんやろ?なんか俺に出来ることあったら手伝うしさ、せやから」 「それとこれとは別だと思う」 戸田くんが続きを言う前に僕の言葉で制した。 嬉しい提案だ。 手すりがないとたぶん立ち上がるのだって痛い。 部屋まで連れていってくれて、家事も手伝ってくれるというなら。 でも彼なら絶対その先に何をいうかくらい、大学からの長年の付き合いの僕にはわかるのだ。 「ちぇ。ケチやなぁ。今日は一段とケチや」 わざとらしく可愛く舌打ちらしきものをした彼は、唇を不満げに尖らせたままだが僕に手を差し出してきた。 「まぁ我慢したる。親友やし?」 「.....ありがと」 「ん」 重ねた手のひらの温度に体だけでなく心も持っていかれそうになりながら、久保さんのことを思い出し、どうにか心を押し込めた。

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