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第16話
そこまで遠くもないはずの寝室なのに、まるでもう時間がないかのように急いで向かう。一歩近づくたびにひんやりとしたフローリングと反比例するかのように身体が熱くなった。
「……っ」
さっきまで人が居たとばかりに崩れたシーツの波にうつぶせの形で体を滑らせると、ふわりと花の柔軟剤の香りと共に僅かに柑橘系の香りがした。
(ああ…なんで……)
涼真は荒くなる吐息を抑えようと、思い出したくない男の残り香のするシーツを握りしめて顔を覆った。
姉がよく纏わせていた香り。
てっきりそれは姉の香水だと思っていたが、実はそれは真尋の香水を姉が使っていたのだということをここに来て知った。
今の涼真にとっては、鼻腔をくすぐるこの香りも姉より先に真尋を連想してしまう。
だからだろうか
この香りを嗅いでしまうと抗いようもなく思い出してしまう快楽とともに懐かしさや寂しさも感じてしまい頭がぐちゃぐちゃになってくる。
「ハァ……ァ、ンあ」
服を脱ぐのももどかしかった。シーツで視界を覆いながらそっと熱くなっている自分のを触ると、スカート越しにもその熱が伝わった。
(はやく、)
膝下までいっきに下着を脱がす。足が完全に開けない不自由さから、更に真尋をより鮮明に思い出させた。
まるであの強い手に抑え込まれてしまっているような。
『鈴香……』
「ふっ……んン、っ…」
前振りも何もなく、クライマックスに近いようなもどかしさで上下に梳くと、堰き止めていた快感が下腹部からぞわりと全身に広がった。
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