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第4話

「よく、似ているでしょう。鈴香の弟の涼真と、父親です。こんな時に…言うものじゃないけれど」 母はそう言ってまた父親に泣き出したが、涼真と真尋は、時が止まったかのように微動だにしなかった。 同性でもかっこいいと思えるほど、真尋は整った顔をしていた。薄い唇に涼やかな目元、きっと周りにいる人が全て好きになってしまうような、そんな気がする。姉が惚れ込んでいたのも無理はない。 「……」 だが、真尋の目はどこか虚ろで、涼真を見ているようで少し先を見ているような、しかし、まっすぐに涼真に向かっていた。 「……っあ、」 真尋が口をわずかに開き、何かを言おうとした時、部屋に警察や関係者が数人入ってきた。どうやら事故状況を説明するらしい。涼真は、頼りなさげに歩く両親について行こうと真尋に背を向け、部屋を後にした。 去り際、男が囁いた気がした。 すずか、と。 真尋の手は、気がついたら姉の手から離れていた。

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