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第5話

姉の葬儀や遺品整理なども終わり、姉の死をゆっくりとだが受け入れることができ始めた時、涼真は地方の大学に進学するため家を出た。 姉の死後、両親は時々会うようになり、どうやら涼真が家を出たあとは一緒に住むそうだ。 邪魔するのも何か悪い気がしたので、少し早めに向こうに行くことにしたら、父と母は心配そうな顔で送り出した。 姉だけではなく自分までもが消えたら、と考えているのだろう。もしそうなったら、両親はどうなってしまうのだろうか。 荷物の入ったボストンバックを持ち通りを歩き出すと、姉の葬式を思い出した。粛々としたものだったが、姉の友人や関係者が皆涙を流し、姉の死を悼んだ。 僕はきっと、そうならないだろうな 涼真は少しだけ眉をひそめて微笑んだ。 涼真はクラスでもあまり目立たない、よく言えば大人しい、悪く言えば地味な性格だった。小さい頃は人並みに明るかったが、両親の離婚により年頃特有のいじめに遭い、それ以降あまり人と関わらないようにしていたのだ。 何より、 すれ違いざまにちらっとガラスに映る自分を見た。弱々しい体に野暮ったい前髪から覗く顔は、姉にそっくりの女性的な顔つきだった。 女っぽい、おかまみたいだ、と罵られたことを思い出し、涼真はパッと視線を逸らした。 その時だった 「っ!」 背後から自分より強い力で腕が回ってきて拘束され、布で口を押さえらた。何か粉のようなものが口の中に入る。 「ん”んっ」 抵抗しようにも、ボストンバックが邪魔になり身動きが取れない。そうしている間にも口の中に何かが入ってくる。本能的に吐き出そうとするが布は力強く押さえられていて外れない。 誰かに助けを呼ぼうと視線を泳がせたがこの時間は人通りが少なく、誰もいなかった。 「すずか…」 耳元で切なそうに囁く声がした。 この声には聞き覚えがある、あれは、 視界がぼやけた。平衡感覚がなくなり、力が全身から抜けていく。 姉の名前を呼ぶ、このこえは、 こん、や…く……しゃ…の… そこで涼真の意識は完全に消えた。

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