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第7話

髪を撫でるような感触を涼真はぼんやりと感じた。 「すずか……」 優しい声が耳をかすめる。そして首筋に、耳に、そっと柔らかい感触がして、リップ音と共に離れた。 「鈴香…」 「ん……」 体を動かそうと少し身じろぎしたが、体全体を抱きしめられているように動けない。 「鈴香?起きたんだね鈴香!」 その一言で、涼真は完全に覚醒した。 「……え、」 目の前には、この間の病院で見た真尋とかいう男の顔が触れるほど近くあった。首筋から僅かに、コーヒーのような香りがする。 「えっ、あの、んっ――」 離れて下さい、と言おうとしたら、突然口を封じられた。呼吸しようと口を離そうとするとすると、後頭部を引き寄せられむしろ深くなる。それがキスされているということに気づいたのは息がもう限界だと思って外れた時だった。 「はっ……これは、どういう…」 「鈴香、あぁ鈴香、やっと君に会えた………」 何を、言っているのだろう 何故僕を見つめながら、この男は姉の名を呼ぶのだろう 「少し、痩せたね。無理もないか。大変なことになったから……」 そう言って、硬直する涼真の体を、真尋はゆっくりさすった。そして、ぎゅっと再び抱きしめる。まるで壊れ物を扱うかのような、加減された抱擁に涼真は抵抗すらできない。 「な、に…言って……」 「鈴香、君の弟がね、死んだんだよ」 子供に言い聞かせるような、ゆっくりとした優しい口調。 「交通事故で死んだんだって……鈴香は弟くんのご遺体を見て、ショックを受けて自分が弟くんだと思いこんだんだ。 弟くんの代わりに、鈴香は鈴香のご両親と暮らしていたんだよ。 ご両親も……かわいそうだけれど、鈴香を弟くんと思い込んでいたみたいだった」 この男は、 「だからね、俺が無理矢理だけど、連れ戻したんだ。あそこにいたら、鈴香は壊れてしまうと思って……」 この男は、狂っているのだろうか

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