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やっぱりデザインは一日であがらなくて休み中に持ち越した。たぶん今日明日だろう。
アキの家には休み初日の今日お邪魔する。僕はDVDを鞄に入れて家をでた。
待ち合わせの地下鉄出口にでる。普段めったにこない駅だから新鮮だ。
途中にコンビニがあるかな。休みだからパ一っとビ一ルでものんで映画の話をしよう。
アキは何をつくってくれるんだろうか。料理はうまいんだろうか。たぶん上手いはずだ、アキなら。
「久しぶりだな、悪いな、こっちまでこさせて」
声がして僕は振り向いた。とっても久しぶりに会うアキは少し痩せていて精悍な感じがする。男らしくてうらやましい。太陽にあったっていない僕は以前にも増して生白い肌色だ。
「少しやせたね~、お互い様か。途中にコンビニあるかな、休み気分を味わうために昼間から酒を飲みたいんだよ。」
「ビ一ルとワインならある。休日気分を味わいたいのは俺も同じだからな。足りなくなったら買いにいけばいいさ。家から歩いて2分くらいだし」
会話を交わしながら二人で歩く。今まで何度もこうやって並んで歩いてきたけれど、なんだか今日は特別な感じがした・・・。
「なんかデザイナ一って感じだね。シンプルな部屋だ」
初めてみるアキの部屋は何もなかった。というか無駄なものが何もない。
ソファはないけど、あの大きなクッションは寝そべってテレビを見るのに最適だ。
二つあるから、彼女が来たりするのかな?
「おまけに何かいい匂いもしてるし」
「昼飯食べてないのか?」
「いや食べたよ、こりゃ~夜が楽しみだな」
家にはト一ストしかなかった。焼くのも面倒で、そのままバタ一を塗ってコ一ヒ一で流し込んだ。
それが食事といえるのなら・・・一応食べた。夜になる前におなかがすいてしまいそう。
ビ一ルでとりあえず乾杯。いつもと違うシチュエ一ションなのか、アキも僕も落ちつかない。心地のいい気まずさとでも言うのか、なんかムズムズするけど、気持ちは穏やかだ。
アキが「映画はなに?」と僕に聞いた。
「気になっててさ、これなんだ」
僕は「ブエノスアイレス」を取り出した。これは同性愛者が主人公の香港映画。僕の好きなトニ一・レオンが出てる。自分の父親が殺されて、ブエノスアイレスまでいってみたら、父親の愛人が男性で…。な話しのはずが、いざ現地にいったら自分が同性愛者の話しだった…まんまと監督に騙されたらしい。普段脚本もろくに書かない監督がニセ脚本まで書いたんだとしたら、よっぽどトニー・レオンでいきたかったんだろう。
それってどんな映画なんだ?と気になる!
「ウォン・カフェイ好きだったのか?」アキがちょっと目を顰める。
あら、この映画興味ない?
「監督もだけど、僕主演のトニ一・レオンが好きなんだ。」
「俺はレスリ一・チャンのほうが好きだな。『覇王別姫』が鮮烈だったから。」
「『覇王別姫』のあとアキ全然口を開かなかったもんね。確かにあのレスリ一・チャンは凄かった。
でもトニ一・レオンだって負けてないと思うけどね。まあ、これから、お互いの好きな男が見られるってことで」
笑いながらDVDをセットする。そうだったアキはレスリ一・チャンが好きだったんだ。
アキはワインをあけて部屋中のカ一テンをしめたあとテレビの音量を上げる。
「映画みるときは暗くしないとな」
「アキと映画みるのは久しぶりだな~」
テキパキと動くアキを横目に、僕は映画への期待感が増す。
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