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アキが立ち上がった時、僕の携帯が鳴った。 『お世話になります。どうですか?あ、よかった、本当にお疲れ様です。 ちょっとまってください手帳確認しますので。はい、はい、これからそちらに向かっても大丈夫ですか? 今琴似なんで、そうですね30分もあれば充分です。はい、伺います。本当にありがとうございました』 代理店の人からで、デザインがアップして無事先方さんの確認もとれたとのことだった。 僕はムラさんに電話をして1時間以内にデ一タを届ける約束をする。 本当はムラさんに届けるのは明日でも同じなんだけれど、なんだかこのままアキと過ごしちゃいけないような気がした。ちゃんと一人で考える時間が欲しかったから。 アキはトイレにはいっているみたいだったので、ドアごしに声をかける。 「ごめん、これから先方に出向いてデ一タをもらってくるよ。今日はこれで失礼するね」 後ろで何か聞こえた気がしたけれど、そのまま玄関をでた。 悪いことしたなと思ったけれど、まずは仕事を片付けようと地下鉄の駅に急いぐ。 家に戻ってアキのことを考えていた。 たぶん、あんな家の出て来かたをしたから、今頃アキは僕が気分を害したと思っている。 でもあのまま、なぁなぁにしちゃいけない気がしたんだ。 アキは今までどんな人を好きになったんだろう。 アキはSEXしたことあるのかと思い当たって、自分の顔が赤くなった。 友達がどんな風に彼女を抱くのかなんて普通考えないものだし。そしてアキは男がその対象になるってことだから、なんだか僕の頭は混乱してきた。 色々考えてもしょうがないと気がつく。 アキに伝えなくちゃいけないのは、アキが男性を好きであっても、僕はまったくそれに動揺していないってことだ。素直に受け入れられるということを言わなくちゃいけない。 世の中には沢山そういう人たちがいる。アキだけが特別じゃない。 異性間の恋愛や行為だけが尊いものじゃない。それはアキが映画を見終わったあとに僕にいったことだ。 携帯を手にしたけれど、電話で話すことじゃないと考えなおす。 明日アキのところに行って、顔をみて話そう。 それに、DVDをおいてきてしまった・・・・。

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