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休みなのに、会社に行くときと同じ時間に起きた。
休日運行スケジュ一ルでガラガラの地下鉄に乗る。いつもならこの時間はすし詰めだ。
ゆっくり歩いてアキの家に向かう。盆休みの貼紙をしている店が目立つ。
世の中が休みなんだということを実感した。
ピンポ一ン
ピンポ一ン
時計を見ると九時。ちょっと早かったかな・・・。まだ寝てるのかな。
アキはいっこうにでてくる気配がない。
出かけていたらどうしよう。もしかして無視?いや、アキに限ってそんなことはない。
出かけているのなら電話してみればいいんだ。
電話を鳴らす。留守番電話にもならずえんえんなり続ける。
ようやく呼び出し音が止まった。
『アキ、おはよ,…・玄関、あけてくれないかな。ピンポン何回もおしたけど、でてきてくれないからさ』
『え?あ、寝てた、え?玄関?』
ドアがあわてたように開いた。鍵かけてなかったの?アキ
ドアと同じくらい慌てたアキをみて僕はケラケラ笑った。
アキの頭はみたことのない寝癖でなんだかかわいかった。
「アキ、服着たままねちゃったの?寝癖のアキなんて初めてみた」
アキはつられたように笑い出した。
これで僕らの空気はもとに戻った。
アキがコ一ヒ一を渡してくれる。ちゃんとコ一ヒ一メイカ一でおとしたコ一ヒ一。
僕のインスタントとは大違い。おいしい。
「仕事大丈夫だったか?」
そうだった、僕はデ一タをとりにくってここを出たんだった。
「うん。納期ギリギリになりそうだけどなんとか目処がついたよ」
「よかったな。俺も担当者と確認しながら進めることにするよ。そうはいっても避けられない場合もあるだろうな」
「アキ、ごめんね」
アキはなにか考え事をしていたのか、僕がなぜ謝ったのかわからないって顔をしている。
「僕、正直ちょっとビックリしたんだ」
「ああ・・・。まあ、当然だろう。軽蔑したか?」
「アキを軽蔑なんてしないよ。僕は言ったじゃない、友達に変わりないって。僕が驚いたのは、軽蔑も嫌悪感もなかったことになんだよ。本当に僕にとってアキという人間がブレなかった。不自然にも感じなくて・・・。それが何かわからないけどビックリしたんだ」
自分で言っていて獲りとめがない。これでアキに伝わっているのかな。
「なんか頭がごちゃごちゃになって、そこに仕事の電話も入って、なんかこのままご飯食べて酒のんで過ごしちゃいけない気がしてね。帰っちゃってなんか申し訳なかったと思ってる。
そして一人で色々考えてみて、思ったんだ。それがどうした、アキはアキで、僕にとって必要な人間だって。
・・・その、セクシャリティ・・・っていうのは重要なポイントだけどさ、僕とアキの間ではそれは何も問題にならないって感じたんだ。言っていることがわかんないよね・・・僕もうまく言えないんだけど・・・」
アキは目をつぶりながら僕の話しを聞いていた。伝わったか自信がなかったけど、今の僕にはそれが精一杯だった。
「俺が映画を見て打ち明けようと思ったときにお前に言ったのと同じだよ。
何でかうまく説明できないけれど言わなくちゃいけないと思った。和泉はそんな俺の告白を聞いて、気持ち悪いとか、友達辞めようとは思わないぞってことを言ってくれている・・・
ありがとな」
今まで見たことのない優しい目で微笑みながらアキは「ありがとう」といった。
僕はなぜだかドキドキしてしまった。
あんな風に笑いかけられたら男だろうが女だろうがアキを好きになっちゃうに決まってる!
動揺している自分にまたドギマギしてアキの顔を見られない。
「だって、僕、1回しか見てないDVDも持たずにここでちゃったし・・・取りにもきたかったんだよ」
ちょっと悔しいから憎まれ口で言い訳した。
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