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何かの音がしつこく鳴っている
目を開けて初めて自分が寝ていたことを理解した。外はもう明るい。
どうやらそのまま寝てしまったようだ。体中が痛い・・・。
♪♪♪♪♪♪♪♪
あ、電話が鳴っているのか・・・
確認せずに通話ボタンを押す。
「アキ、おはよ,…玄関、あけてくれないかな。ピンポン何回もおしたけど、でてきてくれないからさ。もしかして外?」
「え?あ、寝てた。え?玄関?」
がばっと立ち上がり玄関のドアをあけると、そこに困った顔をした和泉が立っていた。
俺の顔をみて、その表情が笑みに変わる。
「アキ、服着たままねちゃったの?寝癖のアキなんて初めてみた。」
ケラケラ笑う和泉を前に、つられて俺も笑い出した。
酒を飲んだ翌日特有のけだるさを追い出したかったのでコ一ヒ一をいれる。
和泉も飲むだろうとマグカップを用意しながら聞く。
「仕事大丈夫だったか?」
和泉は仕事の電話で出て行った。たぶん、ここにいることが気まずかったのだろう。
「うん。納期ギリギリになりそうだけどなんとか目処がついたよ。」
「よかったな。俺も担当者と確認しながら進めることにするよ。そうはいっても避けられない場合もあるだろうな。」
学生と社会人の違いは、休みだろうがなんであろうが、つねに自分の関わる仕事から意識が抜け切らないことだと思う。
「アキ、ごめんね。」
自分のクライアントに気がいっていた俺は、和泉の言葉が何のことかわからなかった。
不思議そうな顔をしていたのだろう、和泉が意を決したように続ける。
「僕、正直ちょっとビックリしたんだ。」
「ああ・・・。まあ、当然だろう。軽蔑したか?」
「アキを軽蔑なんてしないよ。言ったじゃない、友達に変わりないって。僕が驚いたのは、軽蔑も嫌悪感もなかったんだよ。本当に僕にとってアキという人間がブレなかった。不自然にも感じなくて・・・。それが何かわからないけどビックリしたんだ。」
何を言っていいのかわからないけれど、喜んでいいのだろう。
「なんか頭がごちゃごちゃになって、そこに仕事の電話も入って、なんかこのままご飯食べて酒のんで過ごしちゃいけない気がしてね。帰っちゃってなんか申し訳なかったと思ってる。
一人で色々考えてみて、思ったんだよね。それがどうした、アキはアキで、僕にとって必要な人間だって。
その、セクシャリティ・・・っていうのは重要なポイントだけどさ、僕とアキの間ではそれは何も問題にならないって感じたんだ。言っていることがわかんないよね・・・僕もうまく言えないんだけど・・・」
俺は目をつぶりながら和泉の言うことを聞いていた。
言っている本人が整理できていないんだろうということはわかる、でも、とりあえず俺は受け入れられたということだろう。
お前のことを好きだと言ったらこんな反応ではなかっただろうなと苦々しい思いも浮かんだが、和泉は俺を嫌いにはならず軽蔑もせず気持ち悪いとも思わないということだ。
・・よかった。
「俺が映画を見て打ち明けようと思ったときにお前に言ったのと同じだよ。うまく説明できないけれど言わなくちゃいけないと思った。
和泉はそんな俺の告白を聞いて、うまく説明できないけど、気持ち悪いとか、友達辞めようとは思わないぞってことを言ってくれている・・・ありがとな。」
心の底からアリガトウと言えた。
愛おしい気持ちが自然に笑みに滲んでしまう。
和泉は少し照れたように横を向いて言った。
「だって、僕、1回しか見てないDVDも持たずにここでちゃったし・・・取りにもきたかったんだよ。」
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