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「い、いずみ?」 ゆっくりと俺の顔をみた和泉の顔は俺の記憶以上に真っ白だ。 想定していなかった場面にくると人間は動けなくなる。 和泉の顔を見ながら前にも進めず、かといってほおっても置けず、ただただ顔を見つめるだけだった。 和泉はかすれた声で「寒いよ、ものすごく寒い」と呟いた。 それをキッカケに俺の思考が回転し、体が動く。 「お前、いつからいたんだよ!連絡よこせよ!」 思わず怒鳴る俺に向かって和泉は震えながら小さい声でいった。 「石田さんに聞いたら、飲み会終わってアキが帰ったっていうから、そんな待たなくてもいいなと思っていたんだけど、やっぱ札幌の12月寒いね。ずっと連絡してなくて・・・ごめんなアキ。」 『アキ』と和泉の口からでた、その音だけで、俺の中に幸福感が溢れる。 「俺の携帯に電話すればよかったんだよ、家に来るって。 そしたらコンビニなんか寄らないで、いや飲み会になんかいかないですっとんで帰ってきたのに。」 力なく微笑む頬に思わず手をのばしてしまった。 俺は両手で和泉の頬に触れる。夢にまでみた和泉の肌は冷たく陶器のようだった。 そして・・・和泉は表情を歪めた。

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