15 / 34

XV

和泉を中に入れてスト一ブに火をつける。 二人とも無言だった。 3年の空白と寒い部屋、互いに口も聞かず何か言おうとしても言葉になってでてこない。 何か言ったら和泉を責めてしまいそうで黙っているしかなかった。 このままでは、ただ気まずい時間が過ぎていくだけなので、和泉をスト一ブの前に座らせ、自分は隣の部屋で着替えを済ませる。 暖かいものを飲ませようと思ったが、思い直して顔を見ずに聞いた。 「コ一ヒ一がいいか?俺は寒いからタンカレ一を飲むことにする。いっとくけどNo.10のほうだからな。」 「タンカレ一がいい。」 ロックにして渡した。ストレ一トといいたいところだが、飲んだ後だし。 そんなに酔ってしまったらお前の手をつかむことができない・・・。 部屋もだいぶ暖まってきたころ、俺に背中を向けて和泉がようやく口をひらいた。 「僕も着替えたいな。何か貸してくれる?」 心臓がはねあがる、それはここに泊まるってことか? なんでお前は何も言わずに去り、そして何も言わずに帰ってきた? 考えてみれば地下鉄もないし、師走のこの時期タクシ一を呼ぶのも止めるのも時間がかかるだろう。いなくなる前はいつも泊まっていたから不自然ではないが・・・。 和泉、お前にとってこの3年は長かったのか? 短かったのか? 着替えのを渡すと、また表情を歪める。 ものすごく悲しくなった、ただただ悲しくなった。 和泉に会ってから初めて、出会わなければ良かったと思った。

ともだちにシェアしよう!