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和泉side 1
「中村、これおもしろうそうだろ?いかない?」
僕はプレイガイドでみつけたチラシを見せる。
中村は手にとって、すぐにつき返してきた。
「朝までシネマラソン?なにこれ。」
「6本の映画を2500円で見られるんだよ。徹夜で見るんだ。ワクワクしない?」
「全然知らない映画じゃん。それに朝まで見続けるって、かったるい。」
中村が言うこともわかる。確かに見たことのない映画だし、最新作でもない。でもこの映画館でみた作品にハズレはなかったし(高校生になってから行きだした所だけど・・・)
朝まで映画好きが映画だけみるっていうのに興味があった。
でも一人で行くのもちょっと気がひけて、映画の好きな中村を誘ったんだけど、どうも興味がないらしい。
「興味ないならいいよ、一人で行くから。」
中村は背もたれによりかかりながら面倒くさそうに言った。
「桧はさ、自分の思いどおりにならないと、一気に冷たい感じになるよな。
女子が「かわいい桧ちゃん」とかいってるけど、実際かわいくないよな。」
「随分はっきり言うな、中村。」
「まあ、わかりやすいから俺は好きだけど。最近女子の間ではお前の人気が下降ぎみだけど?」
「なんだよ、それ。」
「お前、歓迎できない告白でもさ、一応受け止めてから却下するとか。そんな心遣いが必要じゃない?」
「中途半端な断りはかえって希望を持っちゃうだろう。はっきり言ったほうがいいんだよ。」
「もてるヤツの傲慢さだね~。お前いつか痛い目にあうぞ!絶対だ!俺が予言する。」
「はいはい。覚えておくよ。ところでさ、ほんとにいかない?」
お前、俺の話きいていないだろ・・・と中村はあきれたように僕を見た。
好きだといわれても、僕にはよくわからなかった。
一度も僕と話したことのない相手が「ずっと好きでした」と言う。
小さい頃からお人形さんみたいと言われる容姿のせいだろうけど、いったい僕の何を知っているというのだろうか。
惚れたハレたは面倒だ。恋愛ならスクリ一ンの中でいつでも体感できる。
しょうがない、一人で行くか・・・シネマラソン。
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