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映画に夢中な僕達は映画館で会い、映画の話を通してお互いを知っていった。
アキは口数が多くないけれど、ちゃんと僕の話を聞いてくれたし、聞きたいことも教えてくれる。
シャイなところもあって、僕が女の子の話をふったりすると、困ったような顔をする。
僕はこの困ったような顔が好きだ。
あまり自分がどう思っているのか説明するのが面倒なようだった。
聞きたがりの彼女がいたらさぞかし苦労するだろう。聞いたら教えてくれるけど、アキは嫌なときは黙っている。
でも僕はわかったんだ。アキは本当に嫌なとき少しだけ目を細める。
それを教えてあげたら、可笑しそうに笑った。困った顔もいいけど、笑ったアキはもっといい。
パ一ツがハンサムというより、すべてが総合されていい男を形成している感じだ。
僕のつくりものっぽいのとは大違い・・・うらやましいことに僕より背が高い。
もうそろそろ止まるだろうな、ってアキは言うけど、僕より10cmは高い。たぶん僕は170cmに届かないだろうと諦めている。
一番バランスよく見えるのは13cm差のカップルらしいから155cm弱くらいの女の子であれば問題ないと自分に言い聞かせている。
学校の友達もいいけど、アキはまったく違う友達だ。自分の好きなもので繋がっている友達。
毎日顔を合わせていなくても、会ったらずっと前から友達で昨日もあったような気がしてくる。
映画はどんどん作られているし、過去にも素晴らしい作品がある。
僕らには話すことが沢山あって、それはこの先もアキと友達だってことだ。
高校、大学とお互いに違ったけれど、都合をつけて一緒に映画館に向かう。
一緒に行けないときは一人でいく。実際デ一トで映画をみるっていうのは好きじゃない。
好みや価値観の問題なんだけど、僕がすごくいいと思ったのに、相手が違ったらガッカリするから。
「カイくんは詳しいんだね、すごい」と言われるのもウンザリする。
別に詳しいわけじゃなくて、好きなものは覚えていったことを忘れないから蓄積されるんだと思う。
監督の名前や俳優、映画のタイトル。映画の原作になった本を書いた作家の作品。
とにかくどんどん好きなものは広がっていく。
暇つぶしやデ一トの一環で映画をみるというのが僕にはつまらなかった。
映画のもたらす世界にどっぷりはまって、そのあとご飯を食べながら話をする。
そこでまた新しい発見や、新しい興味が生まれる。暗闇の中で繰り広げられる物語を自分の心に刻みつける。
僕は映画をそういう風に楽しみたいんだ。
だから彼女が映画を見たいといったらレンタルにする。だって僕のコレクションは大抵評判が悪い。
おもしろくないそうだ。でも大抵女の子は見たがる。
結果はわかっているのに、もしかしたら?と期待してしまう。
「難しすぎて解らなかったわ」
とすまなそうに言われて、あ~またかと思うんだ。
その点アキは最高のパ一トナ一だ。意見が合わないこともあるけれど、意見が合わない理由をお互い話し合えるんだ。またそれも楽しかったりする。
アキと知り合うキッカケになったシネマラソンで上映された「狩人の夜」
この映画を絶賛していた作家がS・キングだとアキに教えられて小説を読んでみた。映画化されることが多いキング作品だけど、本のほうがよっぽど怖かったし、映像よりずっと良かった。
アキに「キングの本は臭いがするね・・・活字なのになんか嗅いじゃいけない臭いがする」といったら『そうだろう、キングは映像だと非現実的なのに、活字だとリアルな世界になるんだ。それこそ臭いがするよな』といってくれた。
そうやって僕らは色々なことを交換して、楽しい時間を過ごしていたんだ。
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