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僕とアキの時間が一変した。就職によって。
稼ぐの大変、使うの簡単とはよくいったもので、僕は毎日てんてこ舞いの生活を送っていた。
新人研修でやるロ一ルプレイングが大嫌いで、担当者が「ここでできなきゃ、実地でできない」と言うことに、そんなことはないと思っていたけど、本当だった。
電話一本とるのだってメモとボ一ルペンを用意して「お世話になっています」だと考えてから受話器を握る。
学校の勉強とはまるで違う「知っていて当たり前」という社会の常識を覚え、さらに仕事にも取り組まなくちゃいけない。
家に帰るとどっと疲れる。休日は寝ていて起きたら昼過ぎ。明日の日曜日こそはと思うのに結局ダラダラして終わる。
単館系の映画だと2週間くらいで上映が終わるものが多いから、見逃す機会がぐっと増えた。女の子にあてがっていたレンタルにすっかり今は自分がお世話になっている。
学生のときは隣町から市内に通っていたけど、会社にJRで通勤する気がまったくなかったので実家を離れて市内に引っ越した。料理はできないから台所は汚れない。1ル一ムだから掃除も楽だ。寝るだけの部屋みたいな住処でも埃は溜まるから、掃除も洗濯もしなくちゃいけない。メ一ルのやり取りがいまや僕らの生命線なんだけど、「掃除している」「布団を干した」そんな内容に変ってしまった。
アキはそのままお兄さんと一緒に住んでいればよかったのにって言ったら、「愛想をつかされた」と言っていた。本当だろうか。
アキはプロダクションのデザイナ一だから、僕の印刷関係と関わりのある職業だ。
デザインのことでよくわからないことがあると、こっそりアキに電話して聞いたりする。
家に帰ってから電話することもあるけれど、なんか会話が気詰まりになるんだ。
やっぱり顔を合わせて話をしたい。
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