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社会人になって思うこと。それは時間があっという間に流れていくということだ。 一日がすぐ終わり、このあいだ入社したと思ったのに、短い夏が終わろうとしている。 印刷会社にとってGW・お盆・年末年始という大型連休の時期は仕事が立て込む。 工場が開かないから、スケジュ一ルを前倒しにしなくてはいけないし、通常納期で間に合うものも、この時期だと納品できなくなるからだ。 お客さんに連休前だけではなく連休あとの内容まで、事前にOKを貰わないといけない。 いちおうお盆休みはもらえる予定。何事もなければいいけど・・・。 GW前は同期のヤツが文字校正のミスが発覚してトンデモないことになった。 文字のチェックはお客さんにもしてもらうけど見落とすことがある。 そのときは「お祈りもうしあげます」が「お折りもうしあげます」になっていた・・・。 お客さんから電話がきて発覚、もう工場に回って印刷に入っていたのを止めて、デ一タをやり直して、再度工場につっこんで・・・と 何とか間に合ったものの、つねにそういうことが起こる可能性がある。 いやな予感があたってしまった・・・課長に呼ばれる。 「和泉、今「A・Y」の井上さんから連絡があって。進めているDMを止めたいそうだ。」 「え?もう色校終わって、午後下版ですよ。午前中にOKもらいました。」 「だがな、社長が気に入らんらしい。」 「・・・。」 「あそこは社長が絶対的なんだ、ダメといわれたらダメなんだよ。とりあえず井上さんに電話してくれ。」 一気に気持ちが落ち込む。なんてことだろ、この段階でひっくり返るなんて! 納期は盆明けの20日。明後日から休みに入る・・・ギリギリだ。 それから僕は電話をしたり、代理店の担当者と一緒に打ち合わせに出向いたりと慌しい時間を過ごした。 なんとか先方の社長が言う内容が本人と確認できたので方向性が決まり、デザインは代理店のデザイナ一さんが休み返上で上げることになった。 課長に報告する。 「よし、わかった。さっきムラに確認したら、あいつ盆をずらして休みをとるらしい。 デザインデ一タあがったらムラに持ってけ。休みあけ一番でつっこめるようにしてくれる。ムラに礼いっとけ。」 「いえ、僕出てきますから。」 「いや、お前がでてきたって何もできないだろ?それに入社して4ケ月だ。 バタバタしてたから休んで切り替えしてこい。あ、でもデ一タあがったらムラに届けるのだけは頼む。どこかに行く予定があるか?」 「いいえ、まったくありません。ありがとうございました。」 「だから礼はムラにいっとけよ。」 僕はムラさんにお礼をいって、ようやく自分のデスクに戻った。なんだっていうんだ、もう! でもよかった・・・なんとか目処がつきそうだ。

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