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夏風邪編 2 滴る、蕩ける、甘い雨

 唇に触れた。 「……ん」  君が小さな甘い声をあげたのが、外の雨音と重なって、なんかすごく。 「伊……都、あの……」 「?」 「なんか、すごく……ドキドキする」 「……うん」  俺も、ドキドキしてる。 「伊都、カッコよすぎ」 「ありがと」  変な格好で、変じゃない? 半裸で玄関に立つ俺って。 「ね、日向。タオル、貸して? ズボンもびしょ濡れだから」 「あ! ごめんっ」  手渡されたタオルで腰の辺りを覆い隠す。さすがに、全裸はさ。 「日向のえっち」 「! ちがっ」  脱いでるところをじっと見つめる日向をからかったら、慌てて否定しようとするのが可愛くて、ごめんねって謝りながらまたキスをした。  えっちな日向も、むくれた日向も、全部好きだよって伝わるよう丁寧にキスをする。 「ン……伊都」  俺は自分の歩いた跡がびしょ濡れなのを水の怪獣が尻尾でも引きずって歩いてるみたいに思ったけど。でも、ラッキーなことに君には怪獣じゃなくて、ドキドキしちゃうようなカッコいい感じに見えてたみたいで。自惚れてなんてないよ? 自意識過剰なんかでもない。でも、日向から見て、濡れ鼠の怪獣じゃなくて、キスしたくなるような男子に見えてたらさ。すごい嬉しいなぁって思った。 「あ、あの……」  キスだけじゃなくて、もっと……。 「日向……」  もっと、やらしいこと、したくなってくれたら、嬉しいなぁって。 「ぁ、伊都、拭かないと、風邪……」 「へーき、水泳やってるんだから」  濡れるのなんてへっちゃらだ。だから、もっと、やらしいこと――。 「じゃあ、俺が拭いてあげる」 「……ありがと」  やらしいことをしてもいい? ねぇ、日向。 「ン、ぁ、伊都……髪、拭けない、ぁ、あっン」 「冷たい?」 「ん、んんっ、違っ」  顔をあげると頬を真っ赤にした君が困った顔をしてた。  俺のびしょ濡れの髪が君を冷やしてしまうのならダメだけど、そうじゃないならいいんだ。 「じゃ、大丈夫」 「ん……大丈夫じゃなっ」  ちゅって、キスをして、俺はそのまま君の小さな胸に齧り付く。 「あぁっ」  可愛い喘ぎ声を聞きながら、硬くなってくれる粒にキスをして、舌で突付いて、少しだけ歯を当てるんだ。 「あンっ」  爪で引っ掻くみたいなの、日向は好きだから。 「あぁっ……ン」  ほら、気持ち良さそうに声が蕩けて、身体の内側も柔らかくなっていく。指で丁寧にほぐす君の内側。 「アッンっ」  あったかくて、狭いのに。 「ン、伊都ぉ……ぁっ」  柔らかくて、トロトロな君の内側。 「ぁン……ン、伊都っ」  君が俺を呼ぶ声と同じ甘くて、たまらなく、ドキドキする君の。 「ン、も……へ、き……伊都っ」 「……日向」  君の中を俺でいっぱいにしたいんだ。 「早く……伊都」  頬を撫でると、思い切り甘えたな猫みたいに日向がその柔らかい頬を全力で掌に擦り付ける。 「……来て」  その声で呼ばれちゃうとさ、ゾクゾクってしてしまうんだ。 「日向……」 「あっ……ぁっ」  君の中に入りたいってゾクゾクする。 「あ、あ、あ、あぁぁぁあっ!」  大きく開いた脚の間、指で柔らかくなった内側。 「あっ……んっ」  あったかくて、優しくて、隙間なく吸い付くみたいに狭くしゃぶりつく。すごいんだ。ねぇ、日向の中はさ。ただ、こうして中に入れさせてもらえただけで、気持ちイイんだよ? 蕩けそう。  じっとしてても気持ちイイくらい、中がきゅうきゅうしてくれて。君に欲しがられてる感じがする。 「も……ぁ、伊都」  たまらない心地なんだ。すごく。 「も、伊都、いじわるっ」  ちっとも動こうとしない俺に日向が怒ったような、困ったような顔をした。 「ごめん」 「いじわる、だ」 「ごめんね。でも」  こうしてるだけでも気持ちイイよ? 「日向の中」 「あっ……ンっ、ぁ!」  ゆっくり揺らしたら、背中を仰け反らせて日向が腕の中で甘い声を上げる。キュって腕にしみが付いて、中も狭くしゃぶりついて、すごく気持ちが良さそうで。俺も、すごく気持ち良くて。 「……ずっといたくなるくらい、気持ち良くて」  きゅぅって、君が切なげに中を締め付けたから、もっと近くにいきたくなって、手を伸ばす君を抱き締めながら持ち上げた。  日向を抱っこするような体勢、細い脚で、白い腕で、ぎゅって俺に抱き付いて、囁くんだ。 「俺も……ずっと、奥まで、伊都に来て欲しい、よ」  俺ね、思うんだけど。耳元で、甘い声で、そんなことを囁く日向のほうが。 「あっンっ……伊都っ」  俺よりも、ずっといじわるだと思うよ。

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