113 / 115

夏のヤキモチは美味しいです。編 4 浴衣えちは夏の醍醐味、でしょ?

 季節の中でどの季節が一番好きって聞かれたら、即答で夏って答えるだろうな。  今の俺は。  泳ぐの好きだから。プールで泳ぐのもいいけど、でも海で泳ぐのが特別好き、かな。悲しいこともあった海だけど、それでも今は海が好きだよ。それから夏は楽しいイベントも多いし。花火大会にバーベキュー、プールも。日向とレジャープール、今年も行きたいなぁ。けど、日向綺麗だから、ナンパされちゃいそうで、それはやだなぁ。 「? 伊都? なんで笑って」  うちに辿り着いてすぐ、つい笑っちゃった俺に気がついた日向が不思議そうに首を傾げてる。  だって、今の日向と同じじゃんって思ったんだ。ナンパっていうかさ、よそ見なんてするわけないのに、それでもやっぱり独り占めしていたくて仕方ないんだなぁって。 「んー、なんでもない」 「?」  夏が好きになったのは、お父さんや睦月のおかげがたくさんある。でもそれだけじゃなくて、君が一緒にいてくれたから。レジャープールが楽しいって思うのも、花火大会もバーベキューも君が隣にいてくれるから楽しくなる。 「日向がヤキモチしてくれたの嬉しいなぁって思っただけ」 「!」  君がとても好きだから。  だから、夏の次に好きなのは、冬なんだ。両極端でしょ? 「ほ、ホント? 心狭いって思わない?」 「思わないよ。全然」  冬に君と出会えたから。  真っ白な吐息を吐きながら、寒そうにマフラーの中に唇を隠す君はものすごく綺麗で、目が離せない。  その次が春、かな。君と一緒に暮らすようになった季節だから。でも秋も好きだよ? 君が美味しそうに栗ご飯を食べるとこ見られるから。 「あんな小さなことでヤキモチしたりしてって」 「まさか」  君がそばにいるならどの季節もすごく好き。 「……伊都」 「?」 「あ、の」  日向が真一文字じゃなく唇をキュッと結んだ。 「浴衣姿、かっこいい」 「そ? ありがとう。日向はやっぱり上手だね。俺、普通に服の時と同じ感じで動いてるのにちっとも着崩れしてない」 「ぅ、ん」  唇をキュッと結んだまま、俺のすぐそばで、浴衣の袖を白い指先で握って引き寄せる。 「あ、の」  ドキドキしてる。 「……伊都」  俺も、ドキドキしてる。 「……ん」  大好きな子からの誘惑にすごく。 「ん」  そっと首を傾げながら上を向いた日向が結んだ唇を開いて、触れる。  優しくて、甘くて、澄んだ声を溢しながら、柔らかい舌を絡めてくれる。絡まり合って、喉が鳴って、濡れた音がキスの隙間から溢れてく。 「……ン」  離れる瞬間、混ざり合った二人のがとろりと君の唇を濡らしてるのをうっとりと眺めて。  その唇で俺の首筋にもキスをする。俺より背の低い日向のちょうど唇が、俺の鎖骨くらいのところで、そこに、ちゅうって音を立ててキスをして。 「日向? あの、今日は俺、実習あったから、するのはシャワー」  一応、シャワールームなら大学にもあるから、運動の後にシャワーは浴びたよ? けど、今日すごく暑かったから、ただ歩いてるだけでも汗が滲んで。  だから、今は――。 「シャワーの前に、伊都の」 「っ」 「浴衣、かっこいい、から」  キスが降りてく。日向が締めてくれた帯にもキスをして、跪いて、浴衣の布の合わせ目に触れて、触れたらバレちゃうそれに、硬くなってるそれに、布越しのキスをした。 「伊都、の……」 「っ、日向」  布の合わせ目を捲られて、下着をずり下げられると、普段は日焼け知らずで白い頬が今は興奮で赤く染まってて、その柔らかそうな頬を俺のがぺちんって、飛び出した拍子に叩いた。 「日向っ」 「……ぁ、む」 「っ」  柔らかい頬の内側にキュッと咥えられた。 「日……なた」  優しくて、可愛い唇を窄めて、日向の柔らかい髪を揺らしながら、扱いてく。 「っ」  口に含んだまま、舌先で、先端をくるりと撫でられると、腰が跳ねる。 「ごめ、喉」 「……ん」  勝手に揺らめいた腰、俺ので、君の喉を突いちゃったりしてないかって、痛くしてない? そう尋ねるように、顎に触れて、細い首を撫でた。 「ふぅ……ん、あ……んむ」  撫でると、君が気持ち良さそうに目を細めて、もっとたくさん口でしてあげるって、たくさん頬張ってくれた。 「は、ぁ……日向」 「ん、ん」  浴衣にしがみつくようにしながら、口でたくさん可愛がってくれる日向がやらしくて、えっちで。 「ん、ん」  悦くしてくれる唇が色っぽくて。 「ン」  たまらないのに。 「ん、ひもひ、イイ?」 「っ、日向っ」  咥えたまま上目遣いで、それは。 「っつっっ」  ズル、だ。 「日向、口、離して、吐き出して」 「…………ン」 「ちょ、日向、そんなのマズイから」 「や」  ズルだよ。 「浴衣姿の伊都、かっこいいんだもん、だから、ちょ、伊都?」  だから、俺もする。 「ね、伊都、続きはシャワーの後に、あの、今日暑かったから、俺」  うん。暑かったね。俺もさっきシャワーの後にって言ったでしょ? 「あのっあとで」  君が俺の浴衣姿にたまらないって思ってくれるみたいに。それと同じくらいに。 「あっ……ン」  俺も、俺に欲情してくれる日向が可愛くて、やらしいとこもすごくたまんなくて、口でしてくれる時のうっとりしてるところも、この小さな口いっぱいに頬張ってくれることもたまんなくてさ。 「あっ」  今すぐ君を独り占めしてますって実感したくなっちゃうんだ。

ともだちにシェアしよう!