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好き、ということについて編 2 哲学チック

 普通はどうやって付き合うんだろう。  告白して、が普通だよね。  いや、そもそも普通ってなんだろう。  なんて哲学チック?  でもさ、そう思っちゃうんだ。 「こんにちはぁ」 「こんにちは」  大学で、ランチを食べてたら、平原と女の子が一人、向かいの席に座った。 「彼女、情報科学科」 「そうなんだ」  そして平原がニコニコ顔になってる。  新しい彼女、らしい。平原は前に付き合ってた子って……一年位続いてた。けど、別れて。大学が違ってたせいもあって、会う機会が少なくて、すれ違いが多くなったって言ってた。最初の頃は、違う大学だからちょうどいいって言ってたんだ。年中顔を合わせるより、適度な距離感がある方がって。  俺は大学。  日向は仕事。  すれ違うことも多くて、別々に暮らしてると電話でしかやり取りできないことが多くて、もどかしくて仕方なかった。  けど、「普通」は適度な距離感っていうやつがいるんだって思ったっけ。  年中顔を合わせられることに不満なんてなかったから、少し驚いたのを覚えてる。「普通」はそうなんだって。  けれど、平原が次に付き合うことにしたのは同じ大学の子なんだ。  じゃあ、やっぱり年中顔を合わせてる方がいいなぁって思った、のかな。 「伊都くんと喋っちゃった」 「ちょ、何それ。伊都ってレアキャラみたいな扱い?」  俺? そんなレアでもなんでもないと思うけど。 「えー、だってかっこいいし、女子人気高いけど、女子がいる飲み会とか全然来ないでしょ? みんな話したいってなってるんだよー。知ってた? 伊都くん」  平原の彼女が綺麗なミルクティ色で真っ直ぐ絹糸みたいな髪を手で撫で付けながら、首を傾げてニコッと笑った。 「知らない……けど」 「きゃー、このクールな感じがいいよねっ」  クール……。 「いや、こいつ全然クールじゃないから」  そうそう、本当に。 「すぐ不貞腐れるし、なんか偏屈だし、頭でっかちでさぁ」 「おい、平原、悪口しかないじゃん」 「あはは」  でも、まぁ、合ってるけど。日向と喧嘩になるとすぐに落ち込むし、ヤキモチやきだし、今も「普通」とは、なんてことを考えてる。 「付き合ってる子に心配かけたくないって言って、ぜーーーーったいに女子のいる飲み会に来ないだけ。本当、絶対に来ないから」 「や、もうそれがかっこ良すぎるー。いいなぁ。彼女さん、うらやまぁ」  けど、確かに、頭でっかちなのかもしれない、とは思う。もしくは、おじいちゃん化してる、かもしれない。  羨ま、ってよくみんな言うけどさ、あと「しい」をつけるだけなのに、どうして省略するんだろ。「羨ましい」を「羨ま」に短縮したところでそんなに時間は短縮できてないんじゃないかなって思うんだ。  ね? ほら、頭は、でっかち、かもしれない。 「って、ごめんっ、私、学科の子にUSB渡さないといけないんだった。ごめんっ」 「あ、うん」  そう言って、彼女は席を立つと、パタパタと駆け足でどこかに行ってしまった。  そっか、だから、何もランチ持ってきてなかったんだ。ここに座ったのはいいけど、定食を持ってきてたのは平原だけだった。 「……二人は、飲み会で知り合ったんだ?」 「そ、この間あった飲み会で席が隣になって」 「へぇ」  じゃあ、やっぱり、女の子がいる飲み会は絶対に行きたくないな。なんか、そういうのってさ。 「あ、今、じゃあ女の子のいる飲み会はやっぱり絶対に行かないって思ったろ」 「!」 「はぁ、お前、本当に真面目だねぇ。別に、女の子がいたって、これだけ真面目なんだから不安なとこないじゃん。白崎さんってそんな束縛系?」 「違う。俺がやなだけ」  束縛、なんて思ったことない。  なんだかその言葉は合ってないって感じて、ちょっとムッてしてしまうと、ほらすぐに顔に出るって、平原が笑った。 「ほんのちょっとでも心配させたくないし、不安にさせたくない」  きっと、行ってもいい? と聞いたら、いいよって答えると思う。思うけど、俺がイヤなんだ。日向といる方がずっといい。 「まぁ、君らは年中ラブラブだもんなぁ。倦怠期とかないの?」 「ない」 「えー、普通、ちょっと、ずっと一緒で飽きるなぁとか、普通、他の子ともちょっと話したいなぁとかさ」 「ないって」  じゃあ、逆にさ。 「逆に、普通はあんの?」 「?」 「飽きるとか、他の子とも話したいとか」  そこで平原が一瞬目を開けて、パチパチと数回瞬きをした。まるで、目の前で風船がパンと割れちゃって驚いたみたいに。 「そりゃ、まぁ」 「そっか」 「逆にさぁ、伊都がないのが不思議だけどね」  こういう話はもう何度も平原としてる。なんでよそ見しないの? って、何度も訊かれた。 「だって」 「?」 「一緒にいたい、あの子と話したい、隣にいたいって思うから付き合うんじゃん」  そう、だから、不思議なんだ。 「……確かに伊都はレアキャラだ」  どうしてさ。  ーーあの、伊都くんって、今、付き合ってる人いる?  そう言うんだろう。  どうして。  ーーあの、よかったら付き合ってくれませんか?  そう言っちゃうんだろうって。  ずっとずっと不思議なんだ。

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