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第37話 まだだよ。
昔から、謎だった。
「あっ、伊都っ……ン、ぁ、首筋、やっ、やぁっ……ン」
よくお父さんが睦月のことをズルいって言ったり、その逆にお父さんが睦月にズルいって言われたり。俺には二人がただ仲良く話してるようにしか見えなかったのに、いつどこでズルをしたんだろうと、不思議だった。
「んんんっ、や、ダメ、ダメ」
謎がようやく解けた。そして、たしかにズルい。
「胸、触られるの、ダメ? 気持ち、良くない?」
こんなに可愛いのは、なんか、ズルいよ。
「や、ン、だって……変な声、出るっ」
唇に手の甲を押し当てて、眉を寄せて困った顔をしてるけど、困ってるのは俺。そんな甘くて可愛い喘ぎ声を出す君に困ってる。
「変なんかじゃないよ」
うん。ちっとも変なんかじゃない。むしろ、俺が変になりそうだ。
「俺、初めてだから下手じゃない? 日向のこと気持ち良くできてる?」
「きっ、気持ち良いよっ!」
「そ? よかった」
日向の手を取って、その細い手首に歯を立てた。手首の内側の柔らかいところを、舐めて、ちょっとだけ、カリって、歯で引っ掻くと、堪えきれずに小さく、でもちゃんと甘い声を聞かせてくれる。
「俺、の声なんかじゃ……」
「なんかじゃないよ。日向の声、好きだよ」
「あっ、ン」
耳の付け根にキスをして、仰け反らせたところで喉仏にもキスをする。
「澄んでて綺麗な声だと思う」
「あっ……」
乳首を指で突いて、押し潰すようにしてから、摘んで、芯の感触を指で確かめる。
「やぁぁっん、つ、抓ったら」
声は甘いまま。二本の指でクリクリってイジると、甘い声がもっと綺麗に響いた。
笑って、君の唇にキスをひとつ落っことした。
「日向の声が気持ちイイって教えてくれてる。ここ、好きだって」
白猫の鼻先みたいな可愛いピンク色をした、ツンと尖って硬くなってる乳首にキスをした。そしたら、日向が本物の猫みたいに甘い声で鳴いてくれる。そこにキスされると気持ちイイよって、教えてくれる。
「だから、声、我慢しないで」
「あっ……ン」
とんがった乳首を口に含んで、舌で突くと、手の甲で抑えてても溢れる声。唇で挟んでも、吸っても、歯でちょっとだけ齧っても、柔らかい声が聞こえてくる。気持ち良さそうな鳴き声。
「あっ、あぁ……伊都っ、伊都、や、ン、乳首、やら……気持ちイイ」
「日向」
「も、どうにかなっちゃいそ」
「まだだよ」
まだ、これからなんだから、そう告げたら、瞳を潤ませて、唇を噛んでしまう。噛まないで。痛くしてしまう。
二人とも丸裸。何度も見てきたはずの裸なのに、日向の肌の色がプールで見るみずみずしい白じゃない。火照って、少し赤く染まってる。その横に寄り添うよう移動した。日向は恥ずかしそうに眉根を寄せて、ずっと俺が覆い被さってて見えなかった自分の反応してるそれが、今、丸見えなことに困って、目のやり場がなくなった。俺だけを見つめて、天井に向かって勃ち上がってる自分のそれから目を逸らす。
「あんま、見ないで」
無理。そう即答したら今度は怒った。
「日向だってこっち、俺の見てる」
「だっ、だって! 伊都、ゲイじゃないしっ。さっき大丈夫って言ってたけど、けど……その、やっぱり、平気なのかなって心配になる」
「ゲイじゃないけど、好きな子と裸で抱き合ってたら、反応するよ」
「っ!」
「ね?」
君の手に握らせただけで、喉奥で呼吸が詰まるくらいにギリギリなのに?
「ぁ、伊都の……硬い……の、嬉しい」
ねぇ、だからギリギリなんだってば。なのにそうやって嬉しそうにするの、ズルいよ。
その細い身体を腕で引き寄せると小さく悲鳴をあげた。裸同士だから、くっつけたら、そこも直に触れ合うわけで。
「あっ、ひゃっ」
それを日向の手に握らせて、その手を包むように手を重ねる。ふたり分、君と手を繋いで、君の熱と俺の熱をくっつけて一緒にして、扱いた。
「あ、伊都っ、あ、あっ、伊都」
涙目になって困惑する日向が可愛いくて、その瞼に唇で触れた。
呼吸ごと奪うようにキスをする。舌を絡ませ合いながら、ぶつかり合う二本を一緒くたに握って上下に扱くと、どっちのなのかもわからない先走りで白い指が濡れていく。俺の指も濡れて、やらしくて、日向が可愛くて、手を止められない。
「日向っ」
「やぁ……伊都の手、ダメ、気持ちイイ……も、イっ」
「一緒に……日向」
「ンっ……ん」
先走りを指に絡ませて、そそり立って、張り詰めた二本のペニスをきつく扱きたてた。ビクビクって跳ねる二本をぎゅっと握って、日向がそのきつさに喘いで、白い肩を力ませた瞬間――。
「あ、伊都っ、伊都……あ、あっ、んんんんんっ」
君の手じゃ受け止めきれないくらいに二人して、吐き出した。
「あ……伊都……手が」
まだ、そんなの気にしようとする日向に笑ってキスをした。ちゅっ、てわざと音を立てて楽しそうなのをひとつ、今、イく時に噛んじゃって赤くなった唇に落っことして。ふたりの濡れた手をティッシュで拭って、今度は覆い被さった。
日向はこっちを見たがるくせに、目が合うと、嫌がって、ぷいっとそっぽを向いてしまう。
「……恥ずかしい」
「これからもっと恥ずかしいことするのに?」
「ひゃっ」
可愛い悲鳴をあげたのは、そっぽを向いたせいで無防備になった首筋に俺がキスをしたから。吸い付いて、そこに印を残した。ひとつじゃなくて、そのまま首筋、肩、胸にキスをしていく。
「力、そのまま抜いてて」
そう告げた自分の声が興奮で掠れてた。
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